退職金は、長年勤めた会社からもらえるお金のこと。老後の生活資金として重要な役割を果たします。しかし、退職金はどのように計算されるのか、いくらもらえるのか、税金はどうなるのか、疑問に思う方も多いのではないでしょうか?
この記事では、退職金の計算方法、相場、税金についてわかりやすく解説します。
退職金の基礎知識
まず、退職金とは、従業員が会社を辞める際に、会社から支払われるお金のことです。 長年の功績に対する感謝の気持ちや、退職後の生活を支えるための資金として支給されます。
退職金制度とは、一定の年数以上働いた場合に、働いた年数や在職期間中の業績などに応じてお金が支給される制度のことです。 何年目から支給されるのか、どのような計算方法が用いられるのかは、各企業によって異なります。
退職金には、大きく分けて「退職一時金」と「確定拠出年金」の2種類があります。
- 退職一時金は、退職時に一括で支払われるものです。 一時金として受け取る場合でも、会社によっては分割で受け取ることも可能です。
- 確定拠出年金は、従業員が自分で運用する年金制度です。
その他にも、確定給付企業年金や退職金共済といった制度もあります。
- 確定給付企業年金は、将来受け取れる年金額があらかじめ決まっている年金制度です。
- 退職金共済は、中小企業が従業員の退職金を準備するための制度で、会社が毎月掛金を積み立てていきます。
退職金をもらうためには、一定の条件を満たす必要があります。 例えば、勤続年数が1年以上であること、定年退職であることなどが挙げられます。 しかし、すべての会社に退職金制度があるとは限りません。 就業規則を確認したり、会社に問い合わせたりして、自分が退職金をもらえる対象者なのかを確認しましょう。
また、会社が退職金制度を設けていても、会社が経営難に陥った場合は、退職金が支払われないリスクもあります。
平均退職金額
退職金の平均額は、勤続年数、給与額、企業規模、業種、退職理由などによって異なります。
厚生労働省の調査によると、2021年度の大学卒の平均は約1,091万円でした。 中小企業の場合は、勤続年数34年で高校卒は約1,190万円、大卒は約1,420万円となっています。
勤続年数別に見ると、大学・大学院卒で定年退職した人の平均額は1,983万円です。 また、退職理由は自己都合か会社都合かによっても金額が変わることがあります。 一般的に、自己都合退職の場合は満額支給されず、減額されます。
業種別に見ると、金融業・保険業や情報通信業が高く、生活関連サービス業・娯楽業は低い傾向にあります。
退職金の計算方法
退職金の計算方法は、会社によって異なりますが、一般的には、勤続年数と給与額を基に計算されます。 賃金額、勤続年数、役職など、どのような要素が重視されているのかは、企業によって異なります。
主な計算方法を以下にまとめました。
勤続年数比例方式
勤続年数が長くなるほど退職金が増える
【計算式】退職金 = 勤続年数 × A(Aは定数)
給与比例方式
給与額が高くなるほど退職金が増える
【計算式】退職金 = 平均給与 × B(Bは定数)
ポイント制方式
勤続年数や職位、資格などに応じてポイントを与え、ポイント数に応じて退職金を計算する
【計算式】退職金 = ポイント数 × C(Cは定数)
これらの計算方法を組み合わせたり、企業独自の要素を加味したりするケースもあります。 例えば、勤続年数と給与額の両方を考慮して計算する、といった方法です。
詳しくは、会社の就業規則や人事担当者に確認しましょう。
退職金にかかる税金
退職金を受け取ると、所得税と住民税の支払いが必要です。 勤続年数などによって、どの程度の税金がかかるのか気になる方も多いのではないでしょうか。
ただし、「退職所得控除」という制度があり、税金を軽減することができます。
退職所得控除とは?
退職所得控除とは、退職金にかかる税金の計算において、収入金額から一定額を控除できる制度です。 勤続年数が長ければ長いほど、控除額は大きくなります。
退職所得控除額の計算方法
- 勤続年数が20年以下の場合:40万円 × 勤続年数(80万円未満の場合は80万円)
- 勤続年数が20年を超える場合:800万円 + 70万円 × (勤続年数 – 20年)
退職金にかかる税金の計算方法
- 退職所得控除額を計算する。
- 退職金の収入金額から退職所得控除額を差し引いて、課税退職所得金額を計算する。
- 課税退職所得金額を2分の1にする。
- 2分の1にした課税退職所得金額に税率をかけて所得税を計算する。
- 課税退職所得金額に10%をかけて住民税を計算する。
- 所得税に2.1%をかけて復興特別所得税を計算する。
iDeCoの税制優遇
確定拠出年金であるiDeCoには、以下のような税制優遇措置があります。
- 掛金が所得控除の対象となる
- 運用益が非課税となる
- 一括で受け取る場合:退職所得控除の対象となる
- 分割で受け取る場合:公的年金等控除の対象となる
退職金を受け取る際の注意点
退職金を受け取る際には、以下の点に注意しましょう。
受け取り時期
退職金の受け取り時期は、退職後すぐに受け取るか、後日受け取るかを選択することができます。 中退共の場合は、退職日に60歳以上であれば、分割払いも選択できます。
受け取り方法
退職金の受け取り方法は、現金で受け取るか、口座振込で受け取るかを選択することができます。 また、退職一時金として一括で受け取るか、退職年金として分割で受け取るか、あるいはその両方を選択することもできます。
受け取り方法によって税金のかかり方が異なります。 一時金でできるだけ退職金を受け取っておくと、税金の面では有利な場合が一般的です。 一方、退職年金の場合は、まだ受け取っていない退職金を金融機関側が運用するため、受取額が増える可能性があります。 将来のライフプランに合わせて、どちらの受け取り方が有利かを検討しましょう。
相談窓口
退職金に関する疑問や不安がある場合は、会社の人事担当者や税理士に相談することをおすすめします。 また、以下の相談窓口に相談することもできます。
- 中退共本部
- 法テラス
- 各都道府県労働局
- 総合労働相談コーナー
- 厚生労働省
退職金に関するQ&A
Q. 退職金は必ずもらえるのですか?
A. いいえ、必ずもらえるとは限りません。会社に退職金制度があり、かつ支給要件を満たしている場合にのみ、退職金を受け取ることができます。 会社の就業規則を確認するか、人事担当者に問い合わせてみましょう。
Q. 退職金はどのように計算されるのですか?
A. 退職金の計算方法は、会社によって異なります。勤続年数や給与額を基に計算されることが一般的ですが、ポイント制などの方法を採用している会社もあります。 詳しくは、会社の就業規則や人事担当者に確認しましょう。
Q. 退職金にかかる税金はいくらですか?
A. 退職金には、所得税と住民税がかかります。ただし、「退職所得控除」という制度があり、税金を軽減することができます。 税金の額は、退職金の収入金額、勤続年数、受け取り方法などによって異なります。
結論
退職金は、老後の生活資金として重要な役割を果たします。退職金をスムーズに受け取るためには、事前に制度や計算方法、税金について理解しておくことが大切です。
この記事では、退職金の基礎知識から計算方法、税金、受け取り時の注意点まで、幅広く解説しました。
特に重要なのは、以下の3点です。
- 自分の会社の退職金制度について理解する。
- 退職金の計算方法と税金について理解する。
- 受け取り時期と受け取り方法を検討する。
退職金について疑問や不安がある場合は、会社の人事担当者や税理士、または専門の相談窓口に相談することをおすすめします。この記事が、退職金を理解する上で少しでもお役に立てれば幸いです。