介護職は、高齢化社会の進展に伴い、ますます重要な役割を担っています。しかし、その一方で、「給料が安い」「待遇が悪い」といったイメージを持つ人も少なくありません。
この記事では、介護職の将来性、給料の実態、待遇改善の動きについて解説していきます。
介護職の将来性
高齢化社会の進展に伴い、介護ニーズはますます高まっています。そのため、介護職の需要は今後も増加していくことが予想されます。 2025年には約243万人、2040年には約280万人の介護職員が必要になると推計されており、 介護業界は将来性のある業界と言えるでしょう。
また、令和4年度末現在で介護福祉士の登録者数は187万人を超えており、 多くの人が介護の仕事に携わっています。
介護業界では、ICT化やロボット技術の導入など、新たな取り組みも進められています。 これらの技術革新によって、介護職員の負担軽減や業務効率化が期待されており、より働きやすい環境が整備されていく可能性があります。
さらに、介護はキャリアアップしやすい業界でもあります。 経験を積むだけでなく、資格取得や研修を通して専門性を高め、キャリアアップしていくことができます。
介護職の給料の実態
介護職の将来性は高いと言える一方で、給料面が気になる方もいるかもしれません。結論から言うと、介護職の給料は他の業種と比べて低い傾向にあります。
厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護職員全体の平均月収は約32万円ですが、介護福祉士の平均月収は約33万円です。 一方で、全産業の正社員の平均月収は約38万円となっており、 介護職の給料が低い水準にあることが分かります。
男性介護職員の平均月収は年齢階級別に見ると、29歳以下は約29万円、30~39歳は約33万円、40~49歳は約35万円と、年齢が上がるにつれて増加する傾向にあります。
介護職の給料が低い理由としては、以下のような点が挙げられます。
- 人材不足: 介護業界は慢性的な人材不足に悩まされており、賃上げの余裕がない事業所が多いのが現状です。
- 公的介護保険制度の影響: 介護報酬は国によって定められており、賃上げに上限があるため、給料が上がりにくいという側面があります。
- 身体的・精神的負担の大きさ: 介護の仕事は、身体介護や夜勤など、体力的にきつい仕事です。また、利用者の方の死や、認知症の方への対応など、精神的なストレスも大きい仕事です。これらの負担の大きさに見合った給料が支払われていないという現状があります。 例えば、認知症の利用者の方から暴言を吐かれたり、介助中に怪我をしてしまったりするなど、予期せぬ出来事が起こる可能性もあります。
また、介護職の平均的な手取り額は、月給から所得税や住民税、社会保険料などを控除した後の金額で、およそ18万円〜20万円程度です。これは、月給の7割〜8割程度の額になります。
待遇改善の動き
介護職の給料は低い傾向にありますが、近年では待遇改善に向けた動きが活発化しています。
政府は、介護職員の処遇改善に向けて、様々な取り組みを行っています。 例えば、介護報酬を段階的に引き上げており、事業所の収入増加を促しています。2024年度の介護報酬改定率は+1.59%と発表されました。 介護報酬の引き上げは、介護事業所の経営を安定化させ、介護職員の賃金向上につながることが期待されます。
また、介護職員の賃金改善を目的とした「処遇改善加算」が導入され、一定の要件を満たした事業所には加算が支給されます。 この加算は、介護職員の経験や能力に応じて賃金に反映させるためのものです。2024年6月からは、新たな処遇改善加算が施行され、より効果的に賃金改善を図ることが期待されています。 新たな処遇改善加算では、「新加算(Ⅳ)の加算額の1/2以上を月額賃金の改善に充てる」という配分ルール案が出されており、 ボーナスなどの一時金ではなく、月給の向上に重点が置かれています。
厚生労働省は、介護職員の処遇改善にあたって、平成21年4月の介護報酬プラス3.0%改定、介護職員(常勤換算)1人当たり平均月額1.5万円の賃金引き上げに相当する介護職員処遇改善交付金の創設、雇用管理改善を行う事業主への助成等の各種介護関連対策予算の措置等の多様な施策を実施してきました。
2024年には、介護職員1人あたり、月額平均6,000円の賃上げに相当する額を事業所に支給する施策が実施されます。
その他にも、介護福祉士などの資格取得を支援する制度や、経験年数に応じて昇給する制度を導入する事業所が増えています。 キャリアパス制度の整備は、介護職員のモチベーション向上や人材の定着に役立ちます。
キャリアパス制度の整備
介護職には、介護職員初任者研修、介護福祉士実務者研修、介護福祉士といった資格があります。 これらの資格を取得することで、キャリアアップや給料アップを目指せる場合があります。
例えば、介護職員初任者研修を取得すると、平均給与は約30万円、実務者研修を取得すると約30万円、介護福祉士を取得すると約33万円となります。 無資格者の平均給与が約27万円であることを考えると、資格取得による給料アップの効果は大きいと言えるでしょう。
まとめ
この記事では、介護職の将来性、給料の実態、待遇改善の動きについて解説しました。
介護職の給料は、他の業種と比べて低い傾向にありますが、待遇改善に向けた動きが活発化しており、将来性は非常に高いと言えるでしょう。人材不足や業務の負担の大きさといった課題はありますが、政府による介護報酬の引き上げや処遇改善加算などの施策によって、状況は改善されつつあります。
介護の仕事には、体力的なきつさや精神的なストレスもありますが、人の役に立つことができるという大きなやりがいがあります。高齢化社会が進む中で、介護職はますます必要とされる仕事であり、社会貢献度の高い仕事と言えるでしょう。
この記事が、介護職に興味を持つ方の参考になれば幸いです。