【2026年4月改正】退職金の税金が増える?退職所得課税見直しの影響と対策を解説

2026年4月から、退職金にかかる税金の計算方法が変わります。長年勤めるほど税負担が軽くなる「長期勤続優遇」のしくみが見直され、人によっては手取り額が数十万円単位で変わる可能性があります。

「早めに辞めたほうが得なのか」「今の会社にあと何年勤めるべきか」——そんな疑問を持つ方に向けて、改正のポイントと具体的な手取り額への影響をわかりやすく整理しました。退職・転職を考えている方はぜひ最後まで読んでください。

そもそも退職所得課税とは?現行ルールのおさらい

退職金は「退職所得」として扱われ、給与所得とは別に計算されます。現行制度では、退職所得控除額を差し引いた後の金額の2分の1に所得税率をかける、非常に優遇された計算方式です。

現行の退職所得控除額(〜2026年3月)

  • 勤続年数20年以下: 40万円 × 勤続年数(最低80万円)
  • 勤続年数20年超: 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)

たとえば勤続30年の場合、控除額は 800万円 + 70万円 × 10 = 1,500万円。退職金が1,500万円以下なら税金がゼロになる計算です。

この「20年超に70万円加算」という仕組みが、長期勤続を優遇するキーポイントでした。

2026年4月改正の概要——何が変わるのか

今回の改正の中心は「勤続20年超の部分に適用される加算額の縮小」です。これまで20年超の1年ごとに70万円加算されていたところが、一定の制限が設けられる方向で議論が進められてきました。

改正後の退職所得控除額(2026年4月〜)

改正の骨格は以下のとおりです。

  • 勤続年数20年以下: 現行どおり(40万円 × 勤続年数
  • 勤続年数20年超: 加算額が段階的に縮小される

具体的な縮小幅は政令で定められるため、確定値は国税庁の公式発表を必ず確認してください。

手取り額シミュレーション

ケース1:勤続20年で退職金1,000万円

現行制度での退職所得控除は 40万円 × 20年 = 800万円

  • 退職所得 = (1,000万円 − 800万円)× 1/2 = 100万円
  • 所得税(概算)= 約 5万円(税率5%)

勤続20年以下の計算式は改正後も変わらないため、このケースへの影響はほぼありません

ケース2:勤続30年で退職金2,000万円

現行制度

  • 控除額 = 800万円 + 70万円 × 10 = 1,500万円
  • 退職所得 = (2,000万円 − 1,500万円)× 1/2 = 250万円
  • 所得税(概算)= 約 15万円

改正後(試算)

控除額の縮小幅によっては、退職所得が増加し、税負担が数十万円増える可能性があります。退職金の規模が大きいほど影響が出やすい構造です。

ケース3:勤続35年で退職金3,000万円

長期勤続かつ退職金が大きいケースが最も影響を受けやすいパターンです。現行では控除額が 1,850万円(= 800万円 + 70万円 × 15)に達しますが、改正後はこの上乗せ部分が抑制されるため、課税対象額が増加します。

改正の背景——なぜ長期勤続優遇が見直されるのか

今回の見直しは、政府が掲げる「労働移動の円滑化」政策と連動しています。

現行の退職所得課税は、同じ会社に長く勤めるほど税制上のメリットが大きくなる設計になっており、「転職すると損をする」という心理的ブレーキの一因とされてきました。

  • 転職・副業を促進するという政策目標
  • OECD諸国と比較して日本の退職金優遇は突出して大きいという指摘
  • 年功序列型雇用の変容

こうした背景から、長期勤続優遇の縮小が議論されてきました。ただし急激な変更はサラリーマンの生活設計に影響するため、段階的な見直しとなっています。

早期退職を検討している方へのアドバイス

「2026年3月末までに退職すべきか」問題

改正前(〜2026年3月31日)に退職すれば、現行の計算式が適用されます。勤続年数が長く、退職金の規模が大きい方ほど、改正前退職のメリットが大きくなります。

ただし、以下の点に注意してください。

ステップ1: 自社の退職金規定を確認し、勤続年数ごとの支給額を試算する ステップ2: 現行制度と改正後制度で手取り差額を計算する(税理士への相談を推奨) ステップ3: 差額が転職先の条件・キャリアの方向性と見合うか判断する ステップ4: 退職金だけで判断せず、健康保険・年金の切り替えコストも込みで検討する

税制改正だけで退職タイミングを決めてはいけない理由

退職金の税負担が増えるといっても、その差は多くの場合数十万円〜100万円台です。一方、転職先の生涯賃金差・スキルアップの機会・働きやすさなど、キャリア全体の価値はそれをはるかに上回ります。税金の節約だけを理由に、キャリアにとって最適でないタイミングで退職するのは本末転倒です。

FAQ

Q. 2026年4月以降に受け取った退職金はすべて増税になりますか? A. 勤続20年以下の方は控除計算式が変わらないため、原則として影響はほぼありません。影響が大きいのは勤続20年超で退職金額が大きいケースです。

Q. 改正後の正確な税額を知りたい場合はどうすればよいですか? A. 国税庁のWebサイトや税務署への相談が確実です。退職金額が大きい場合は、事前に税理士に試算を依頼することをおすすめします。

Q. 分割で退職金を受け取ると税負担は変わりますか? A. 退職金を年金形式で受け取る場合は「雑所得」として扱われ、退職所得控除は適用されません。受け取り方によって税額が変わるため、こちらも専門家への確認が必要です。

Q. 早期退職優遇制度(希望退職)で上乗せされた退職金も同じ計算ですか? A. 基本的には退職所得として同じ計算式が適用されます。ただし上乗せ額の性質によって扱いが異なるケースもあるため、会社の人事部や税理士に確認してください。

まとめ

2026年4月の退職所得課税改正は、特に勤続20年超かつ退職金が大きい方に影響が出やすい改正です。改正の核心は「長期勤続優遇の縮小」であり、転職促進という政策目標と連動しています。

  • 勤続20年以下の方への影響は軽微
  • 勤続30年以上で退職金が2,000万円を超えるような方は、改正前退職を検討する価値がある
  • 退職タイミングはあくまでキャリア全体で判断し、税金の節約だけを優先しない

改正内容の確定情報は、国税庁の公式サイトや税務署で必ず確認してください。本記事の数値はあくまで概算・試算であり、個別の税務判断は専門家にご相談ください。