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退職後の健康保険、一番お得なのは?3つの選択肢を徹底比較

退職後の健康保険選びはなぜ重要?3つの選択肢を解説

長年勤めた会社を退職したとき、多くの人が直面するのが「健康保険をどうするか」という問題です。在職中は会社が手続きや保険料の半額負担をしてくれていましたが、退職後はすべて自分で選択し、手続きをしなければなりません。

主な選択肢は、以下の3つです。

  1. 会社の健康保険を「任意継続」する
  2. お住まいの市区町村の「国民健康保険」に加入する
  3. 家族の健康保険の「扶養」に入る

どの選択肢を選ぶかによって、保険料の負担額は大きく変わり、年間で数万円から数十万円もの差が生まれることもあります。しかし、制度が少し複雑で「どれが自分にとって一番お得なのかわからない」と悩む方も少なくありません。

この記事では、退職後の健康保険の3つの選択肢について、それぞれの仕組みや保険料、メリット・デメリットを分かりやすく解説します。具体的なシミュレーションも交えながら、あなたの状況に最適な選択ができるよう、徹底的にサポートします。

退職後に選べる3つの健康保険制度

まずは、3つの制度の概要をそれぞれ見ていきましょう。加入条件や保険料の仕組みが異なるため、特徴をしっかり掴むことが重要です。

1. 任意継続:退職した会社の保険を最長2年間継続

任意継続(にんいけい)とは、退職後もそれまで加入していた会社の健康保険に、個人で継続して加入できる制度です。本来、退職と同時に資格を失いますが、この制度を利用すれば最長2年間、在職中とほぼ同じ保障内容を維持できます。

2. 国民健康保険:市区町村が運営する保険に加入

国民健康保険(国保)とは、自営業者やフリーランス、無職の方など、会社の健康保険に加入していない人が入る公的な医療保険制度です。退職して任意継続や家族の扶養を選ばない場合は、原則としてこの国民健康保険に加入することになります。

3. 家族の扶養:家族の会社の保険に被扶養者として加入

配偶者や子ども、親などが会社の健康保険に加入している場合、一定の条件を満たせば、その家族の「被扶養者」として保険に加入できます。この場合、自分自身で保険料を支払う必要がありません。

【徹底比較】任意継続 vs 国民健康保険 vs 家族の扶養

それでは、3つの制度のメリット・デメリットを詳しく比較していきましょう。


任意継続被保険者制度

在職中と同じ保険証を使い続けられる安心感が魅力ですが、注意点もあります。

任意継続のメリット

  • 扶養家族が何人いても保険料は一律
    在職中と同様に、配偶者や子どもなどを扶養に入れることができます。国民健康保険と違い、扶養家族が増えても保険料は変わりません。家族が多い世帯ほど、このメリットは大きくなります。
  • 健康保険組合独自の付加給付を継続できる
    会社の健康保険組合によっては、医療費の自己負担をさらに軽減する「付加給付」や、人間ドックの補助、保養所の利用といった手厚いサービスがあります。任意継続なら、こうした独自の保障を引き続き受けられます。

任意継続のデメリットと注意点

  • 保険料は全額自己負担(在職中の約2倍)
    これまで会社が半分負担してくれていた保険料が、全額自己負担になります。そのため、単純に考えると保険料は在職中に天引きされていた額の約2倍になります。
  • 原則2年間、保険料は変わらない
    保険料は退職時の給与(標準報酬月額)を基に計算され、原則として2年間変わりません。つまり、退職して収入がゼロになっても、保険料の負担は続きます。
  • 加入期間は最長2年
    任意継続でいられるのは最長2年間です。2年が経過した後は、国民健康保険に加入するか、家族の扶養に入る必要があります。
  • 手続き期限が退職後20日以内と非常に短い
    任意継続の最大の注意点が、「退職日の翌日から20日以内」という厳格な申請期限です。1日でも過ぎると加入できないため、退職前から準備しておく必要があります。

国民健康保険

収入状況に応じて保険料が変わる、柔軟性のある制度です。

国民健康保険のメリット

  • 収入が減れば翌年の保険料も安くなる
    国民健康保険料は前年の所得を基に計算されます。そのため、退職して収入がなくなった場合、翌年度の保険料は大幅に安くなります。長期的に見れば、収入状況に応じた負担になるのが大きなメリットです。
  • 失業などによる減免制度がある
    倒産や解雇といった非自発的な理由で離職した場合、申請すれば保険料が大幅に軽減される制度があります。自治体によっては独自の減免制度を設けている場合もあるので、困ったときは役所の窓口に相談できます。
  • 加入期間に制限がない
    任意継続のような2年間の縛りはなく、再就職するまで安心して加入し続けられます。

国民健康保険のデメリットと注意点

  • 退職直後は保険料が高額になりがち
    退職した初年度は、在職中の高い所得を基に保険料が計算されるため、収入がないにもかかわらず高額な保険料を請求されることがあります。
  • 扶養の概念がなく、家族も人数分保険料がかかる
    国民健康保険には「扶養」という考え方がありません。そのため、配偶者や子どもなど、世帯の加入者全員分の保険料(均等割)が加算されます。扶養家族がいる場合は、任意継続より世帯全体の負担が重くなる傾向があります。

家族の扶養に入る

経済的な負担が最も軽い、理想的な選択肢です。

家族の扶養のメリット

  • 保険料の自己負担がゼロ
    最大のメリットは、保険料の負担が一切ないことです。退職後の収入が不安定な時期に、保険料の支出がゼロになるのは家計にとって非常に大きな助けとなります。
  • 扶養先の保険の給付を受けられる
    扶養家族として、扶養者(保険に加入している家族)と同じ内容の保障を受けられます。高額療養費制度はもちろん、健康保険組合独自の付- 加給付なども対象になります。

家族の扶養のデメリットと注意点

  • 収入要件(年収130万円の壁など)が厳しい
    扶養に入るには、厳しい収入要件をクリアする必要があります。一般的には、年間収入が130万円未満(60歳以上は180万円未満)で、かつ扶養者の収入の半分未満であることが条件です。
  • 失業手当を受給中は扶養に入れない場合がある
    ハローワークから失業手当(基本手当)を受け取る場合、その金額によっては「収入あり」とみなされ、受給期間中は扶養に入れないことがあります。
  • 扶養してくれる家族がいないと利用できない
    当然ですが、会社の健康保険に加入している配偶者や親、子どもなどがいない場合は、この選択肢はありません。

【ケース別】保険料シミュレーション!あなたに最適な選択肢は?

では、具体的にどの選択肢が一番お得なのでしょうか。典型的な3つのケースでシミュレーションしてみましょう。
※保険料はあくまで一般的な目安です。お住まいの自治体や加入する健康保険組合によって異なります。

ケース1:独身・扶養家族なしの場合

退職時の月収が30万円(年収360万円)だったと仮定します。

  • 任意継続:保険料は月額約3万円程度。
  • 国民健康保険:保険料は月額約2万5千円程度。

この場合、国民健康保険の方が年間で約6万円お得になる可能性があります。一般的に、収入がそれほど高くない単身者の場合は、国民健康保険の方が安くなる傾向にあります。

ケース2:配偶者や子どもを扶養している場合

同じく月収30万円で、収入のない配偶者を扶養している場合を考えます。

  • 任意継続:扶養家族がいても保険料は変わらず月額約3万円
  • 国民健康保険:本人の保険料(約2万5千円)に加え、配偶者の分(均等割)が数千円上乗せされ、月額で任意継続とほぼ同等か、それ以上になる可能性があります。

このように、扶養家族がいる場合は任意継続の方が有利になるケースが多くなります。特に子どもがいる世帯では、その差はさらに大きくなります。

ケース3:扶養に入れる条件を満たす場合

もし配偶者などが会社員で、あなたが収入要件を満たしているなら、迷う必要はありません。

  • 家族の扶養:保険料はゼロ

他の選択肢と比較するまでもなく、経済的負担がまったくない「家族の扶養」が最もお得な選択肢です。

賢い移行プラン:「任意継続」と「国保」のいいとこ取り

「退職1年目は高所得で計算される国保を避け、任意継続に加入。収入がなくなった翌年、保険料が安くなるタイミングで国保に切り替える」という戦略も有効です。このような段階的な移行も検討してみましょう。

状況別・退職後の健康保険の選び方【まとめ】

最後に、あなたがどの選択肢を選ぶべきか、判断するためのポイントをまとめます。

① まずは「家族の扶養」に入れるか確認しよう

何よりも先に、家族の扶養に入れる条件(特に年収130万円未満)を満たしているかを確認してください。条件をクリアできるなら、保険料負担がゼロになるこの方法が最優先の選択肢です。

② 扶養に入れないなら「任意継続」と「国保」の保険料を比較

扶養が難しい場合は、任意継続と国民健康保険の二択です。判断のポイントは「扶養家族の有無」「退職前の収入」です。

  • 扶養家族がいる、または退職前の収入が高かった人任意継続が有利な可能性大
  • 単身者で、退職前の収入がそれほど高くない人国民健康保険が有利な可能性大

正確な判断のためには、退職前に必ず会社の健康保険組合(任意継続の場合の保険料)と市区町村の役所(国民健康保険の場合の保険料)の両方に問い合わせて、具体的な保険料を試算してもらいましょう。

③ 再就職など、状況が変わった場合の手続き

もし再就職が決まった場合は、新しい会社の健康保険に加入することになります。その際は、任意継続や国民健康保険からの脱退手続きを忘れずに行いましょう。どちらの制度も、途中でやめることは可能です。

まとめ:自分に合った健康保険を選んで、安心して次のステップへ

退職後の健康保険選びは、少し手間がかかるかもしれませんが、退職後の生活設計において非常に重要なステップです。適切な選択をすれば、年間で数十万円単位の支出を抑えることも可能です。

まずはこの記事を参考に、ご自身の状況(収入、家族構成)を整理し、それぞれの選択肢の保険料を試算してみてください。金銭的な不安が一つ解消されるだけで、退職後の新しい生活をより安心してスタートできるはずです。

健康保険の手続きをしっかりと済ませ、あなたのセカンドライフが充実したものになるよう、心から応援しています。