「ハローワークで紹介された求人、なんだか話が違う…」
「給料や休日が、求人票に書いてあった内容と全く違う!」
転職活動中、または新しい職場で働き始めたばかりのあなたが、もしこんな状況に直面したら、不安と怒りでいっぱいになることでしょう。
しかし、どうか一人で抱え込まないでください。求人票に虚偽の内容を記載することは、法律で禁じられた行為です。あなたには、正当な権利を主張し、この問題を解決する力があります。
この記事では、ハローワークの求人票が嘘だった場合にどうすれば良いのか、具体的な対処法から専門の相談窓口、さらには二度と騙されないための予防策まで、あなたが次の一歩を踏み出すために必要な情報を網羅的に解説します。
この記事を読めば、あなたはもう泣き寝入りすることなく、冷静かつ的確に行動できるようになるはずです。
ハローワークの求人票が嘘?あなたも被害者かも…よくある7つのケース
「求人票と内容が違う」と一言で言っても、その手口はさまざまです。まずは、どのような虚偽・相違が起こりやすいのか、具体的なケースを見ていきましょう。ご自身の状況と照らし合わせてみてください。
ケース1:給与・手当に関する嘘
最も深刻で、生活に直結するのがお金の問題です。
- 求人票の基本給よりも実際の金額が低い。
- 「月給30万円」と書かれていたが、実は固定残業代(みなし残業代)が含まれていた。
- 「賞与あり」と記載があったのに、業績を理由に一度も支払われない。
- 交通費や住宅手当が、求人票の条件通りに支給されない。
ケース2:労働時間・残業に関する嘘
働き方の根幹を揺るがす、時間に関するトラブルも後を絶ちません。
- 「残業は月20時間程度」と聞いていたのに、実際は毎日深夜までサービス残業が常態化している。
- 「ノー残業デーあり」とアピールしているが、全く機能していない。
ケース3:休日・休暇に関する嘘
心身の健康を保つために不可欠な休日が、約束と違うケースです。
- 「土日祝休み」のはずが、実際は休日出勤や振替出勤が多い。
- 求人票の年間休日数に、法律で定められた有給休暇の日数が含まれており、実質的な休日が少ない。
ケース4:雇用形態に関する嘘
キャリアプランを根底から覆す、悪質なケースです。
- 「正社員募集」で応募したのに、「まずは契約社員から」と入社直前に言われた。
- 試用期間が不当に長く、いつまで経っても本採用にならない。
ケース5:業務内容に関する嘘
希望していた仕事と全く違う業務を任されるパターンです。
- 「企画職」として採用されたが、実際はテレアポなどの営業活動ばかりさせられる。
- 「Webサイト運用」の担当のはずが、紙媒体の雑務がメインだった。
ケース6:勤務地に関する嘘
- 面接で聞いていたオフィスとは違う、遠隔地の支社への配属を命じられた。
ケース7:福利厚生に関する嘘
- 「退職金制度あり」と書かれていたのに、実際にはそんな制度は存在しなかった。
これらのケースは、企業の単なる「記載ミス」ではなく、「本当のことを書くと人が集まらない」という採用側の事情から、意図的に行われている可能性も少なくありません。
求人票の嘘は違法!企業が負う3つの重いリスク
「少し条件が違うくらい、我慢するしかないのか…」と諦める必要は全くありません。求人票に虚偽の情報を載せることは、明確な法律違反です。企業側には、あなたが思う以上に重いリスクが科せられます。
リスク1:刑事罰(懲役または罰金)
職業安定法第65条では、虚偽の条件を提示して労働者の募集を行うことを固く禁じています。違反した企業には「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という刑事罰が科される可能性があります。これは、求職者の権利を守るための非常に重要なルールです。
リスク2:行政指導と企業名の公表
ハローワークや労働局は、虚偽求人の報告を受けると企業に対して事実確認を行い、是正指導や改善命令を出します。企業がこれに従わない場合、企業名が公表されることもあります。企業名が公表されれば社会的な信用は失墜し、今後の人材採用に深刻なダメージを受けることになります。
リスク3:労働者からの損害賠償請求
面接などで明確な説明がないまま、求人票と違う条件で雇用契約を結んだ場合、その求人票の内容が契約の一部と見なされることがあります。
実際に、求人サイトに掲載した給与額と実際の支払額が異なったとして、企業側に約100万円の支払いを命じた裁判例もあります。労働者は、企業に対して未払い賃金の支払いや損害賠償を請求する権利があるのです。
このように、求人票の嘘は「許されない行為」であり、あなたは泣き寝入りせずに行動を起こす権利を持っています。
【状況別】求人票と違うと感じた時の完全対処フロー
問題に気づいたタイミングによって、とるべき対応は異なります。冷静に、順序立てて行動しましょう。
ステップ1:内定前・入社直後の初期対応
面接や内定通知の段階で「あれ?」と違和感を覚えたら、それは重要なサインです。
- まずは直接確認する
担当者の勘違いや記載ミスの可能性もあります。まずは「求人票には○○と記載がありましたが、こちらの条件で間違いないでしょうか?」と冷静に確認しましょう。この時の企業の対応(誠実に説明してくれるか、話を濁すか)は、その会社の体質を見極める良い機会です。 - 納得できなければ内定を辞退する
もし企業側の説明に納得できなかったり、不誠実な対応をされたりした場合は、勇気を持って内定を辞退しましょう。労働者が内定を辞退することは法的に全く問題ありません。入社前に気づけたのは幸運です。入社後にさらに大きなトラブルに巻き込まれるリスクを回避できます。
ステップ2:入社後に発覚した場合の対応
すでに入社してしまった後に問題が発覚した場合は、より慎重な対応が必要です。
- 社内で相談する
まずは直属の上司や人事部に「求人票の内容と実際の労働条件に相違がある点についてご相談したいのですが」と話し合いの場を設けましょう。ここで問題が解決すれば、それに越したことはありません。 - 外部の専門機関に相談する
社内で解決しない、あるいは相談できる雰囲気ではない場合は、ためらわずに外部の専門機関に助けを求めましょう。この時、「雇用条件の相違」を理由に退職すれば、自己都合退職ではなく会社都合退職として扱われ、失業保険を早く受け取れる可能性があります。
次の章で、あなたの状況に最適な相談先を詳しく解説します。
悩みに応える!専門家が解説する4つの無料相談窓口
どこに相談すれば良いのか分からない、という方のために、主な相談窓口の役割と特徴をまとめました。すべて無料で相談できます。
1. ハローワーク求人ホットライン
「まずはハローワークにこの事実を伝えたい」という場合に最適な窓口です。
- 役割:ハローワーク経由の求人に関するトラブル専門の窓口。企業への事実確認と、求人票の内容を是正するよう指導を行います。
- メリット:土日祝も対応しており、匿名での相談も可能です。企業への指導が比較的スピーディーに行われます。
- こんな人におすすめ:「とにかくこの虚偽求人を是正してほしい」「他の人が同じ被害に遭わないようにしたい」と考えている方。
- 注意点:個人の未払い賃金の請求など、金銭的な解決を代行してくれるわけではありません。あくまで企業への「指導」が目的です。
2. 労働基準監督署(労基署)
「法律違反を正してほしい」という場合に頼りになる国の機関です。
- 役割:労働基準法などの法律違反を取り締まる機関。企業への立ち入り調査や是正勧告など、強い権限を持っています。
- メリット:残業代の不払いや違法な長時間労働など、明確な法律違反に対して強制力のある指導を行ってくれます。
- こんな人におすすめ:「残業代が支払われない」「法定休日が与えられない」など、明らかな法律違反の証拠がある方。
- 注意点:個人の民事トラブル(パワハラなど)の解決や、金銭請求の代理は行いません。
3. 総合労働相談コーナー
「どこに相談すべきか分からない」という場合に、まず訪れたい総合窓口です。
- 役割:あらゆる労働問題の相談に対応し、問題解決のために最適な専門機関(労基署や弁護士など)を案内してくれます。
- メリット:パワハラやいじめ、不当解雇など、求人票の嘘以外の問題もまとめて相談できます。
- こんな人におすすめ:複数の労働問題を抱えている方や、どの窓口が適切か判断に迷っている方。
- 注意点:直接的な解決機能はなく、あくまで「案内役」「助言役」です。
4. 弁護士
「金銭的な解決をしたい」「会社と戦いたい」という場合の最終手段です。
- 役割:あなたの代理人として、企業との交渉、労働審判、訴訟などを行います。
- メリット:未払い賃金や損害賠償の請求など、金銭的な解決を具体的に目指すことができます。法的な手続きをすべて任せられます。
- こんな人におすすめ:「会社を訴えたい」「失ったお金を取り戻したい」と強く考えている方。
- 注意点:相談料や着手金などの費用が発生します。まずは法テラスなどの無料法律相談を利用するのも一つの手です。
あなたの目的(企業に改善を促したいのか、金銭的な補償を求めたいのか)によって、選ぶべき相談先は変わります。まずは状況を整理し、最適な窓口に連絡してみましょう。
解決への第一歩!集めておくべき6つの証拠リスト
どの機関に相談するにしても、「客観的な証拠」があるかどうかが、交渉を有利に進めるための最大の鍵となります。相談する前に、以下のものをできる限り集めておきましょう。
- 求人票のコピーやスクリーンショット
約束の労働条件が何だったかを示す、最も基本的な証拠です。 - 雇用契約書・労働条件通知書
実際に会社と交わした契約内容がわかる公的な書類です。 - 労働時間がわかる記録
タイムカードのコピー、業務日報、PCのログイン・ログアウト記録、出退勤時間を記録した手帳のメモなど、客観的に労働時間を示せるものはすべて証拠になります。 - 給与明細・源泉徴収票
実際に支払われた給与額を証明する重要な書類です。 - 会社とのやり取りがわかる記録
上司からの業務指示メールや、面接時の会話を録音したデータなども有効です。相手の同意がない会話の録音も、裁判では証拠として認められるケースが多いです。 - 同僚の証言
同じような状況の同僚がいれば、その証言も強力なサポートになります。
証拠が多ければ多いほど、あなたの主張の正当性が証明されやすくなります。
もう騙されない!怪しい求人を見抜く7つのチェックリスト
最後に、未来のあなたが同じ過ちを繰り返さないために、危険な求人情報を見抜くためのポイントをご紹介します。
【求人票でチェックすべきこと】
- 1. 給与の内訳は明確か?:「月給○○万円(固定残業代含む)」など、内訳がきちんと書かれているか確認する。
- 2. 休日日数は現実的か?:年間休日数が極端に少ない、または多すぎる場合は注意が必要です。
【面接で必ず確認すべきこと】
- 3. 労働条件を再確認する:「求人票では残業は月20時間程度とありましたが、皆さんの実際の状況はいかがでしょうか?」など、突っ込んだ質問をする。
- 4. 具体的な業務内容を聞く:「1日の仕事の流れを具体的に教えていただけますか?」など、業務の解像度を上げる質問をしましょう。
【こんな求人は要注意!危険な兆候】
- 5. 好条件すぎる求人:仕事内容が曖昧なのに、給与だけが異常に高い求人は危険信号です。
- 6. 企業の信頼性が低い:公式サイトがない、情報が古いなど、実態がよくわからない企業は避けましょう。
- 7. 不自然なコミュニケーション:担当者が個人のメールアドレスを使ったり、応募していないのに一方的に連絡してきたりする場合も要注意です。
これらのポイントを意識するだけで、トラブルに巻き込まれるリスクを大幅に減らすことができます。
まとめ:正しい知識で、安心できる転職活動を
ハローワークの求人票と実態が違うという問題は、決して許されることではありません。もしあなたが今、そのような状況で苦しんでいるなら、それはあなたのせいではなく、企業側に責任があるということを忘れないでください。
一人で悩まず、まずは行動を起こすことが大切です。
この記事で紹介した対処フローと相談窓口を参考に、あなたの状況に合った一歩を踏み出してください。ハローワーク求人ホットライン、労働基準監督署、弁護士など、あなたの味方になってくれる専門家が必ずいます。
そして、これからの転職活動では、怪しい求人を見抜く目を養い、自分の権利を守るための知識を武器にしてください。
あなたの転職活動が、納得のいく、安心できるものになることを心から願っています。