再就職先が決まって再就職手当を申請しようとしたら、会社に「採用証明書」への記入をお願いしなければならない——。ところが小さな会社やお店では、そもそも人事部という部署自体が存在しないことも珍しくありません。「人事担当じゃないと書いてもらえないのでは」「店長や社長に頼んでもいいの?」と不安になる方は多いはずです。結論からいうと、採用証明書は人事担当者でなくても記入できます。この記事では、誰が記入者として認められるのか、依頼する際の伝え方、記入時に注意すべきポイントまで、実際の窓口対応を踏まえてまとめました。
結論:採用証明書は人事以外が記入してもまったく問題ない
採用証明書は、ハローワークが「本当にその会社に採用されたか」「どのような雇用条件か」を確認するための書類です。様式上、記入者の役職や部署を限定する記載はなく、会社を代表して雇用の事実を証明できる立場の人であれば誰が書いても構いません。人事部がある大企業ならその担当者が書くのが自然ですが、次のような人が記入しても何ら問題ありません。
- 直属の上司(店長・所属長・現場責任者)
- 経営者本人(社長・代表取締役・個人事業主)
- 総務・経理担当者
- 事務全般を兼任しているパート・アルバイト事務員
重要なのは「誰の肩書きで書くか」ではなく、記入内容が事実と一致していること、そして会社として証明する体裁が整っていること(社印の押印や会社名の記載など)です。この2点さえ満たされていれば、ハローワークの審査で記入者の役職を理由に差し戻されることはまずありません。
採用証明書とは何か
提出目的:再就職手当の審査書類
採用証明書は、失業保険(基本手当)の受給資格者が早期に再就職した際に申請できる「再就職手当」の審査に使う書類です。ハローワークは自己申告だけでは再就職の事実を確認できないため、雇用主側からの証明を求めています。つまりこの書類は「本人のための書類」ではなく「ハローワークが会社に対して事実確認を行うための書類」という性格が強く、記入責任は本人ではなく会社側にあります。
提出先・提出期限
採用証明書は、再就職手当の支給申請書とあわせて管轄のハローワークに提出します。提出期限が定められているため、会社への依頼はできるだけ入社後すぐ、遅くとも入社から1〜2週間以内に済ませておくと安全です。記入者が誰であっても、この期限を守れるかどうかのほうが実務上は重要な論点になります。
再就職手当の申請フロー全体は失業保険の初回認定日の流れを完全ガイドや失業認定申告書の書き方完全ガイドでも解説しているので、あわせて確認しておくと申請の全体像がつかみやすくなります。
誰が記入すべきか:会社側の記入者の条件
記入者に求められる要件は「会社を代表できる立場」であること
採用証明書の様式には、記入者の氏名・役職・会社名・所在地・電話番号を記載する欄があります。ハローワークが確認したいのは「この会社に実在する人物が、責任を持って内容を証明したか」という点です。したがって記入者の要件は以下のように整理できます。
| 要件 | 説明 |
|---|---|
| 雇用の事実を把握している | 入社日・雇用形態・賃金額など証明する項目を正確に把握している |
| 会社を代表する立場にある | 社印を押せる、あるいは会社として書類を発行できる権限がある |
| 連絡が取れる | ハローワークから内容確認の連絡が入る場合があるため、電話連絡が可能な人 |
「人事」という部署名や肩書きは要件に含まれていません。中小企業やパート・アルバイトの採用現場では、この3条件を満たすのが店長や経営者本人であるケースのほうがむしろ一般的です。
中小企業・個人事業主の場合
従業員数名〜数十名規模の会社や個人事業主のもとでは、人事専任の担当者がいないことのほうが多数派です。この場合、代表者本人や、経理・総務を兼任しているスタッフが記入するのが通例です。個人事業主自身が事業主印(角印がなければ実印や認印でも可とされるケースが多い)を押して証明する形でも、必要事項が正確に記載されていれば受理されます。不安な場合は提出前に管轄ハローワークへ電話で「社印がなくても大丈夫か」を確認しておくと安心です。
パート・アルバイト採用時特有の記入ポイントはパート・アルバイト採用時の採用証明書の書き方で詳しく解説しています。
大企業で人事部がある場合
人事部・労務部が独立して存在する会社では、雇用契約の締結や社会保険手続きを一括管理しているため、慣例として人事担当者が記入することが多くなります。ただし配属先の部署が独自に発行してもハローワーク側の審査基準上は問題ありません。会社によっては「対外書類はすべて人事経由」という社内ルールが存在するだけで、これは法令上の要件ではなく社内手続き上の慣習である点を理解しておくと、依頼先で混乱が起きにくくなります。
記入者別のケーススタディ
直属の上司(店長・所属長)が記入する場合
小売業や飲食業など店舗単位で採用が完結する業種では、本部の人事に問い合わせるよりも店長が直接記入したほうが早く済むことがほとんどです。店長が入社日・雇用契約の内容を正確に把握していれば、店舗の印(社印の支店印など)を押して発行して差し支えありません。本部確認が必要な場合でも、店長経由で本部に転送してもらう形で対応可能です。
経営者・代表者本人が記入する場合
従業員数名の会社やスタートアップでは、代表者自身が採用から労務管理まで一手に担っていることも多く、代表者本人が記入するのがもっとも早く確実です。代表者印(会社実印)または角印を押印し、代表者の氏名・役職(代表取締役など)を明記すれば、証明書類としての体裁は整います。
総務・経理担当者が記入する場合
給与計算や社会保険手続きを担当している総務・経理担当者は、雇用契約の詳細を把握している立場にあるため、記入者として自然な選択肢です。特に「人事」という肩書きがなくても、雇用条件通知書や賃金台帳にアクセスできる立場であれば正確な記入が可能です。
アルバイト・パート採用の場合の記入者
アルバイト・パート採用では、そもそも書類手続き全般をシフト管理者や店舗責任者が兼任していることが多く、記入者が現場の管理者になるケースが標準的です。試用期間中の採用でも証明書自体は発行してもらえます。試用期間特有の注意点は試用期間中でも採用証明書はもらえる?を参照してください。
記入時に注意すべきポイント
会社印(角印)の要否
多くの様式では会社印の押印欄がありますが、押印そのものよりも「会社として発行した書類であることが確認できるか」が本質です。角印がない小規模事業者の場合、代表者印や担当者印で代用できることが多いため、様式や地域のハローワークによる違いも踏まえ、事前に管轄窓口へ確認しておくと手戻りを防げます。
記入内容の正確性(雇用形態・賃金・入社日)
記入者が誰であっても、以下の項目に誤りがあると再就職手当の審査が滞る原因になります。
1. 入社日(雇用契約書・辞令と一致しているか) 2. 雇用形態(正社員・契約社員・パート・アルバイトの別) 3. 雇用期間の定めの有無 4. 賃金額・支払い方法
特にパート・アルバイトから正社員登用を前提とした採用の場合、契約書上の雇用形態と実態にズレが生じやすいため注意が必要です。
記入者の押印・サインの位置
様式上の指定欄に沿って記入し、証明者欄には記入者本人の役職と氏名を明記します。空欄のまま印だけを押す、あるいは会社名だけを記載して個人名を省略すると、ハローワークから追加の確認連絡が入ることがあるため、必要事項はすべて埋めるようにしましょう。
採用証明書全体の記入例や項目ごとの書き方は、採用証明書の書き方【2026年版】や採用証明書の書き方・もらい方完全ガイドで網羅的に解説しています。
記入を依頼する際の伝え方(テンプレート)
人事担当がいない場合の依頼文例
人事部がない会社では、依頼相手に「何を書けばいいのか」が伝わらないと後回しにされがちです。以下のような文面で依頼すると、記入者の負担を減らせます。
> お忙しいところ恐れ入ります。ハローワークへの再就職手当申請のため、「採用証明書」という書類への記入・押印をお願いしたく、ご相談させてください。人事担当の方でなくても、雇用条件をご存知の方であればどなたでも記入いただけると窓口で確認しております。所要時間は5分程度で、入社日・雇用形態・賃金の欄をご記入のうえ、会社印(なければ代表者印)を押していただくだけで大丈夫です。申請期限が◯月◯日のため、可能でしたら今週中にご対応いただけますと助かります。
依頼しても断られた場合の対処法
まれに「うちでは書けない」「本部でないと対応できない」と言われることがあります。この場合はまず、記入者の役職に法的な制限がないことをハローワークの窓口で確認し、その情報を伝えたうえで再依頼するのが有効です。それでも対応が難しい場合は、担当のハローワーク窓口に事情を説明し、代替の証明方法(雇用契約書の写しなど)で対応できないか相談してみましょう。
よくあるトラブルと解決策
記入者が退職・異動してしまった場合
採用時の担当者がすでに退職・異動している場合でも、後任の担当者や現在在籍している別の従業員が代わりに記入することができます。雇用契約書や辞令など、入社時の記録が残っていれば、記入者が採用時と別人であっても証明内容の正確性は担保できます。
記入内容に誤りがあった場合の訂正方法
記入後に誤りが見つかった場合は、二重線を引いて訂正印を押す、または様式を新しく発行し直してもらうのが基本です。ハローワークに提出済みの場合は、勝手に訂正せず先に窓口へ相談してから対応するとトラブルを避けられます。
よくある質問(FAQ)
Q1. アルバイト先の店長が記入しても審査に影響しませんか?
影響しません。店長が雇用条件を把握していれば、店舗印や店長個人の印で発行された書類でも証明書として有効に扱われます。
Q2. 個人事業主で社印がない場合はどうすればいいですか?
代表者印(実印・認印)で代用できることが多いです。念のため提出前に管轄ハローワークへ電話で確認しておくと安心です。
Q3. 記入者の役職を証明書に書く必要はありますか?
様式の証明者欄に役職・氏名を記載する欄があるため、記入しておくことをおすすめします。役職の記載がなくても即座に不受理になるわけではありませんが、確認の手間を減らせます。
Q4. 本社の人事部がある会社で、店舗の店長が記入してもいいですか?
問題ありません。ただし社内規定で「対外書類は本部経由」と定められている会社もあるため、社内フローを一度確認しておくとスムーズです。
Q5. 記入をお願いしたら「そんな書類は知らない」と言われました。どうすればいいですか?
採用証明書はハローワークが定める様式で、多くの会社にとって発行頻度の低い書類です。様式そのものをハローワークで受け取り、記入項目を担当者と一緒に確認しながら依頼すると対応してもらいやすくなります。
Q6. 派遣社員の場合、記入するのは派遣元・派遣先どちらですか?
雇用契約を結んでいる派遣元(派遣会社)が記入するのが基本です。派遣先の現場責任者ではなく、派遣会社の担当者に依頼しましょう。
Q7. 記入者の押印を電子印(データ)で対応してもらえますか?
会社によっては電子印での運用が進んでいますが、ハローワークが紙の原本や実印相当の押印を求める場合もあるため、事前に管轄窓口へ確認するのが確実です。
Q8. 記入をお願いしても提出期限に間に合わなさそうです。どうすればいいですか?
早めにハローワークへ事情を相談してください。会社側の記入に時間がかかることはよくあるケースのため、窓口で対応を相談できることが多いです。
まとめ
- 採用証明書は人事担当者でなくても記入可能。要件は「雇用の事実を把握し、会社を代表して証明できる立場」であること
- 中小企業や個人事業主では、代表者本人や総務・経理担当者、店長が記入するのが一般的
- 記入時は入社日・雇用形態・賃金などの正確性が最重要。役職名そのものは審査基準ではない
- 社印がない場合は代表者印での代用が可能なケースが多いが、事前にハローワークへ確認すると安心
- 依頼が難航する場合は、役職に制限がないことを伝えたうえで再依頼するか、ハローワーク窓口に相談する
まずは会社の中で「雇用条件を一番把握している人」に声をかけ、申請期限から逆算して早めに依頼することが、スムーズな再就職手当申請への近道です。