失業保険の受給中に再就職が決まると、「再就職手当」を申請するために採用証明書という書類が必要になります。ただ、新しい職場がまだ試用期間中の場合、「本採用が確定していないのに、会社は証明書を出してくれるのだろうか」と不安になる人は少なくありません。結論から言うと、試用期間中でも採用証明書は発行してもらえます。この記事では、その理由と会社への依頼のタイミング、記入例、発行を渋られたときの対処法まで、実務目線で解説します。
結論:試用期間中でも採用証明書は発行してもらえる
試用期間は「本採用前のお試し期間」というイメージがありますが、法的には入社日の時点で労働契約(雇用契約)がすでに成立している期間です。そのため、会社が発行する採用証明書には試用期間中の在籍状況をそのまま記載してもらえば問題ありません。
ただし注意点が1つあります。再就職手当の支給要件には「1年を超えて引き続き雇用されることが確実であると認められること」という条件があるため、試用期間の長さや本採用の見込みによっては、ハローワーク窓口で追加の確認を求められる場合があります。証明書自体はもらえても、審査でチェックされるポイントがあると理解しておきましょう。
採用証明書とは何か、なぜ必要なのか
採用証明書の役割
採用証明書は、失業保険(基本手当)の受給資格者が再就職した際に、採用した会社側がその就職の事実を証明する書類です。様式はハローワークが交付するもので、氏名・採用年月日・雇用形態・雇用期間の定めの有無・賃金などを、新しい勤務先の担当者(人事・総務・事業主本人など)が記入・押印します。
再就職手当の申請に必須な理由
再就職手当は、失業保険の支給日数を一定以上残して早期に再就職した人に支給される「就業促進手当」の一種です。申請には「就業促進再就職手当支給申請書」と、この採用証明書をセットでハローワークに提出する必要があります。採用証明書がないと、そもそも再就職の事実をハローワークが確認できず、審査に進めません。
提出期限(採用日の翌日から1か月以内)
再就職手当の申請は、原則として採用された日(就職日)の翌日から1か月以内にハローワークへ提出する必要があります。この期限は試用期間の有無にかかわらず一律なので、「試用期間が終わってから証明書をもらおう」と後回しにすると期限に間に合わなくなるおそれがあります。入社が決まったら早めに動き出すのが鉄則です。
試用期間中の採用でも発行対象になる理由
試用期間も「雇用契約成立日」に含まれる
採用証明書に記入する「採用年月日」は、内定日ではなく実際に働き始めた日(雇用契約の効力が発生した日)です。試用期間であっても、この日からすでに雇用契約は始まっているため、会社側は事実に基づいて証明書を発行できます。会社の担当者が「試用期間中だから正式な証明はまだ出せない」と誤解しているケースもあるので、必要であれば「試用期間中でも雇用契約は成立しているので発行いただけます」と説明すると話が早く進みます。
「1年を超えて雇用されることが確実」という要件との関係
再就職手当を受け取るには、雇用保険の被保険者として1年を超えて雇用が継続する見込みがあることが条件の1つです。試用期間付きの雇用契約であっても、契約自体に期間の定めがなく(無期雇用)、本採用への移行が通常想定されている場合は、この要件を満たすと判断されるのが一般的です。一方で、「試用期間中の評価次第で契約するかどうかを改めて決める」といった、雇用継続が不確実な形態の場合は、ハローワーク窓口で個別に確認が必要になることがあります。
本採用が確約されていない場合の注意点
有期契約かつ更新の可能性が不透明な場合や、試用期間の結果次第で本採用を見送る可能性が契約書に明記されている場合は、採用証明書の「雇用期間の定め」欄の書き方や、窓口での説明の仕方が重要になります。不安がある場合は、証明書を提出する前にハローワークの担当窓口へ雇用契約の内容を伝えて相談しておくと、後から審査で差し戻されるリスクを減らせます。
採用証明書を会社に依頼するタイミングと伝え方
依頼する時期の目安
提出期限が就職日の翌日から1か月以内であることを踏まえると、依頼のタイミングは入社後、できるだけ早い段階(入社初日〜1週間以内が目安)が望ましいです。会社によっては人事担当者の確認や決裁に数日〜1週間程度かかることもあるため、期限ギリギリに依頼すると間に合わなくなる可能性があります。
会社への伝え方の例文
初めての依頼で言い出しにくい場合は、次のような形で伝えるとスムーズです。
> 「入社にあたり、ハローワークに再就職手当の申請をしたいので、『採用証明書』という書類にご記入・ご押印をお願いできますでしょうか。ハローワークの様式をお渡しします(またはハローワークのウェブサイトからダウンロードできます)。ご記入いただきたいのは採用年月日・雇用形態・賃金等の項目で、試用期間中の状況をそのままご記載いただければ問題ないとハローワークでも案内されています。」
このように「ハローワークで案内されている手続きである」ことを添えると、会社側も対応しやすくなります。
人事・総務が対応に慣れていない場合の対応
小規模な会社や、再就職手当の申請に対応した経験が少ない会社では、担当者が採用証明書自体を知らないこともあります。その場合は、様式を印刷して持参する、記入例を一緒に渡す、不明点があればハローワークに直接問い合わせてもらってよい旨を伝える、といった配慮をするとスムーズです。
採用証明書の書き方・記入例(試用期間ケース)
採用年月日の書き方
「採用年月日」は内定通知日ではなく、実際の就労開始日(雇用契約の効力発生日)を記入します。試用期間がある場合も、試用期間の開始日を採用年月日として記入するのが基本です。
雇用形態・雇用期間の記入ポイント
| 項目 | 試用期間ありの場合の記入例 |
|---|---|
| 雇用形態 | 正社員・契約社員など、本採用後に予定されている形態を記入(会社の指示に従う) |
| 雇用期間の定め | 「なし」(無期雇用契約で試用期間のみ設けている場合)/「あり」+契約期間(有期契約の場合) |
| 試用期間の有無 | 様式に試用期間の記入欄がある場合は、期間(例:入社日から3か月間)を明記 |
雇用形態や雇用期間の定めの有無は、そのまま「1年を超えて雇用されることが確実か」の判断材料になります。会社の実態と異なる記入をすると後で不整合が生じるため、必ず会社の担当者が事実に基づいて記入することが前提です。
賃金欄の記入ポイント
賃金欄には、試用期間中の賃金(本採用後と金額が異なる場合はその旨も)を記入してもらいます。試用期間中は賃金が本採用後より低く設定されている会社もあるため、担当者に「試用期間中の実際の支給額」で記入してよいか確認しておくと安心です。
試用期間中に会社が発行を渋る・断られたときの対処法
よくある拒否理由
- 「試用期間中はまだ正式な社員ではないので証明できない」という誤解
- 採用証明書という書類自体を知らない・扱ったことがない
- 個人情報や賃金情報を外部(ハローワーク)に提出することへの抵抗
- そもそも制度上の協力義務がないと考えている
ハローワークに相談する
会社が発行に協力してくれない場合は、まず担当のハローワークに事情を説明し、相談することをおすすめします。会社側への説明の仕方についてアドバイスをもらえたり、場合によってはハローワークから会社へ様式や制度趣旨の説明を行ってもらえることもあります。
発行が遅れる場合の申請への影響
会社の対応が遅れて提出期限に間に合いそうにない場合も、自己判断で諦めず早めにハローワークへ相談しましょう。窓口で状況を説明すれば、対応方法について案内を受けられる可能性があります。放置して期限を過ぎてしまうと、再就職手当そのものを受け取れなくなるおそれがあるため、「間に合わないかもしれない」と感じた時点で早めに動くことが重要です。
試用期間中に本採用されなかった場合はどうなる?
再就職手当の返還は発生するか
再就職手当を受給した後、試用期間中に本採用されず短期間で離職した場合、原則として支給要件を満たした時点(申請・支給決定時点)で適正に支給されたものであれば、直ちに返還を求められるわけではありません。ただし、申請内容に事実と異なる点があった場合や、支給要件を満たしていなかったことが判明した場合は、返還を求められることがあります。
不安がある場合は、試用期間中に離職の可能性が出てきた時点で、早めにハローワークへ相談しておくとトラブルを避けやすくなります。
早期に退職した場合の失業保険の再受給
試用期間中に本採用されず離職した場合、雇用保険の被保険者期間や離職理由によっては、改めて失業保険(基本手当)の受給資格を得られる可能性があります。前職の受給資格に残日数があった場合の扱いや、新たな受給資格の要件は個別の状況によって異なるため、離職が決まった段階でハローワークに相談し、必要な手続きを確認しておきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 試用期間中でも採用証明書はもらえますか?
はい、もらえます。試用期間も雇用契約が成立している期間のため、会社は在籍の実態に基づいて証明書を発行できます。ただし本採用の見込みなど、再就職手当の審査で確認される項目はあります。
Q2. 採用証明書はいつまでに提出すればいいですか?
原則として就職日(採用年月日)の翌日から1か月以内にハローワークへ提出する必要があります。試用期間の有無で期限が延びることはないため、早めに会社へ依頼しましょう。
Q3. 試用期間中は雇用形態を「正社員」と書いてもいいですか?
会社が正式に正社員として採用し、試用期間終了後もその雇用形態が継続する予定であれば、その旨を記入してもらって問題ありません。有期契約や契約社員としての試用であれば、実態に合わせて正確に記入してもらうことが重要です。
Q4. 試用期間中に解雇や自己都合退職になったら再就職手当はどうなりますか?
支給決定後に離職した場合、申請時点で要件を満たしていれば原則として直ちに返還にはなりませんが、申請内容と実態が異なっていた場合は返還を求められることがあります。離職の可能性が出てきたら早めにハローワークへ相談してください。
Q5. 会社が採用証明書の書き方を知らないと言われたらどうすればいいですか?
ハローワークの様式(記入例つき)を印刷して渡すか、ハローワークの窓口や電話で会社の担当者向けに説明してもらえるか相談してみましょう。
Q6. 採用証明書と雇用契約書は同じものですか?
異なります。雇用契約書は会社と労働者の間で交わす契約書類、採用証明書はハローワークに再就職の事実を証明するための専用様式です。雇用契約書のコピーだけでは代用できません。
Q7. 試用期間中の賃金と本採用後の賃金が違う場合、どちらを記入しますか?
採用証明書には、記入時点(試用期間中)の実際の賃金を記入してもらうのが基本です。不明な点は会社の担当者かハローワークに確認しましょう。
Q8. 採用証明書をもらえないまま期限が過ぎたらどうなりますか?
再就職手当の申請ができなくなる可能性があります。期限に間に合わない見込みが出た時点で、できるだけ早くハローワークに相談してください。
まとめ
- 試用期間中でも雇用契約はすでに成立しているため、採用証明書は発行してもらえる
- 提出期限は就職日の翌日から1か月以内。試用期間の長さに関係なく一律なので早めに依頼する
- 再就職手当には「1年を超えて雇用が継続することが確実」という要件があり、試用期間の契約内容によっては窓口での確認が必要になる場合がある
- 会社が対応に慣れていない・発行を渋る場合は、様式や制度趣旨を説明しつつ、早い段階でハローワークに相談する
- 試用期間中に本採用されず離職した場合の扱いは個別事情によるため、離職の可能性が出た時点でハローワークに確認しておくと安心
次のアクションとしては、入社が決まった時点でまず会社に採用証明書の様式を渡し、記入・押印を依頼すること、そして不安な点があれば早めに管轄のハローワークへ相談することをおすすめします。
*本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の状況によって取り扱いが異なる場合がありますので、最新の情報や具体的な手続きについては、必ず管轄のハローワークまたは厚生労働省の公式情報をご確認ください。*