「パートだから高年齢求職者給付金はもらえないのでは」と不安に思う方は少なくありません。結論から言うと、週の所定労働時間が20時間以上あり、31日以上の雇用見込みがあるパート・アルバイトであれば、正社員と同じように雇用保険に加入しており、65歳以上で離職すれば高年齢求職者給付金の対象になります。この記事では、パートが雇用保険に加入する条件と「週20時間」の判定方法、実際にもらえる金額の目安、申請の流れまでを整理して解説します。
結論:週20時間以上働くパートなら高年齢求職者給付金はもらえる
パート・アルバイトという雇用形態そのものは、高年齢求職者給付金の受給に影響しません。判断基準になるのは「雇用保険に加入していたかどうか」であり、その加入条件が週の所定労働時間20時間以上と31日以上の雇用見込みの2つです。この条件を満たして雇用保険料を給与から天引きされていた(=雇用保険の被保険者だった)パートは、65歳以上で離職した際に高年齢求職者給付金を受け取れます。逆に言えば、雇用形態がパートであること自体は不利にはならず、「週20時間」というライン一本で加入の有無が決まる点を押さえておくことが重要です。
高年齢求職者給付金とは
65歳以上の「高年齢被保険者」が対象
雇用保険では、65歳以上で雇用保険の加入条件を満たしている人を「高年齢被保険者」と呼びます。高年齢被保険者が離職し、求職の意思と能力を持ってハローワークに求職の申込みをすると、高年齢求職者給付金の受給資格が発生します。パート・正社員といった雇用形態の違いは、この「高年齢被保険者かどうか」の判定には関係ありません。
一般の失業手当(基本手当)との違い
64歳以下が対象になる「基本手当」は、原則28日ごとに失業の認定を受けながら継続的に支給される仕組みです。一方、高年齢求職者給付金は一度きりの一時金として支給されます。毎月の給付ではなく、まとまった金額を一括で受け取るとイメージすると分かりやすいでしょう。
一時金として一括支給される
被保険者であった期間に応じて、基本手当日額の30日分(被保険者期間1年未満)または50日分(被保険者期間1年以上)が、失業の認定を受けた際にまとめて支給されます。この日数の違いは退職理由ではなく、雇用保険に加入していた期間の長さで決まります。
パート・アルバイトが雇用保険に加入する条件
週の所定労働時間が20時間以上
雇用保険の加入条件のうち、パートにとって最も重要なのが「1週間の所定労働時間が20時間以上」であることです。ここでの「所定労働時間」とは、雇用契約や就業規則で決められている労働時間のことで、実際にその週何時間働いたかとは別の概念です。契約上週20時間以上と定められていれば、繁忙期に労働時間が短くなった週があっても加入条件自体は維持されます。
31日以上の雇用見込みがあること
もう一つの条件が「31日以上引き続き雇用されることが見込まれること」です。短期のスポット的なパート・単発バイトはこの条件を満たさず雇用保険の対象外になりますが、契約更新の可能性がある雇用契約であれば、31日以上の雇用見込みがあると判断されるのが一般的です。
加入手続きは会社側の義務
週20時間以上・31日以上の雇用見込みという2つの条件を満たすパートを雇う場合、会社側には雇用保険への加入手続きを行う法的義務があります。条件を満たしているのに給与明細に雇用保険料の天引きが見当たらない場合は、手続き漏れの可能性があるため、在職中に一度確認しておくと安心です。
週20時間の判定でよくある疑問
「所定労働時間」と実際の労働時間の違い
前述のとおり、加入判定の基準は契約上の「所定労働時間」です。実際の労働時間が繁忙期・閑散期で前後しても、契約自体が週20時間以上であれば加入条件を満たしたままになります。逆に契約上は週20時間未満でも、恒常的に週20時間を超える実労働が続く場合は、契約内容の見直しとあわせて加入対象になるケースもあるため、勤務実態と契約内容にズレがあると感じたら会社の担当部署やハローワークに確認するとよいでしょう。
シフト制で労働時間が週ごとに変動する場合
シフト制のパートでは、週によって労働時間が20時間を上回ったり下回ったりすることがあります。この場合も判定の基準になるのは雇用契約上定められた「平均的な所定労働時間」であり、単発的な変動だけで加入・非加入が切り替わるわけではありません。不安な場合はシフト表の平均値を会社の労務担当に確認してもらうのが確実です。
掛け持ちで働く場合はどうなる?(65歳以上のマルチジョブホルダー制度)
65歳以上の場合、1つの勤務先だけでは週20時間に届かなくても、2つの事業所での労働時間を合算して週20時間以上になれば、本人の申出によって雇用保険に加入できる特例があります。これは「雇用保険マルチジョブホルダー制度」と呼ばれ、それぞれの勤務先での所定労働時間が週5時間以上20時間未満であることなどが条件です。65歳以上で複数のパート先を掛け持ちしている場合は、この制度の対象になっていないか確認する価値があります。
もらえる金額はいくら?計算方法とシミュレーション
被保険者期間で日数が変わる(30日分・50日分)
高年齢求職者給付金の支給日数は、離職時点までの雇用保険の被保険者期間によって決まります。被保険者期間が1年未満なら30日分、1年以上なら50日分です。パートであっても正社員であっても、この日数の考え方は変わりません。
基本手当日額の算出方法
支給額の計算は「基本手当日額 × 支給日数」です。基本手当日額は、離職前6か月の賃金を180日で割った「賃金日額」に、賃金水準に応じた給付率(おおむね50〜80%、賃金が低いほど高い率が適用される)を掛けて算出します。パートは正社員より賃金水準が低いことが多いため、給付率としては高めの区分が適用されやすい傾向があります。
パート勤務のケースでの試算例
たとえば、離職前6か月の賃金合計が108万円(1日あたりの賃金日額 約6,000円)のパートで、被保険者期間が2年(50日分の対象)だったケースを考えます。賃金水準が低いため給付率が80%程度になったと仮定すると、基本手当日額は約4,800円、50日分の一時金は約24万円という試算になります。実際の金額は賃金水準や上限額によって変わるため、あくまで目安として捉え、正確な金額はハローワークの窓口で確認するのが確実です。
申請の流れと必要書類
ステップ1:離職票の受け取りとハローワークでの求職申込
退職後、会社から離職票が届いたら、住所地を管轄するハローワークで求職の申込みと受給資格の申請を行います。パートであっても手続きの流れは正社員と同じです。
ステップ2:受給資格の決定
ハローワークが雇用保険の加入記録をもとに受給資格の有無や被保険者期間を確認し、支給日数(30日分か50日分か)を決定します。
ステップ3:失業認定と一時金の振込
求職の意思と能力があることが確認され、失業の認定を受けると、一時金がまとめて指定口座に振り込まれます。
必要書類一覧
- 離職票(1・2)
- 個人番号確認書類(マイナンバーカード等)
- 本人確認書類(運転免許証等)
- 写真(縦3cm×横2.4cm程度)
- 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
必要書類は管轄ハローワークによって多少運用が異なる場合があるため、来所前に電話やハローワークインターネットサービスで最新情報を確認しておくと二度手間になりません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 週20時間ちょうどのパートは雇用保険に加入できますか?
はい。「20時間以上」が条件のため、契約上の所定労働時間が週20時間ちょうどであれば加入条件を満たします。契約書や雇用条件通知書に記載された時間を確認しましょう。
Q2. 週19時間のパートを2つ掛け持ちしていますが対象になりますか?
1つの勤務先だけでは週20時間に届きませんが、65歳以上であれば複数の勤務先の労働時間を合算できる「雇用保険マルチジョブホルダー制度」の対象になる可能性があります。本人からの申出が必要な制度のため、ハローワークへの相談がおすすめです。
Q3. パートでも被保険者期間が短いと日数は減りますか?
はい。被保険者期間が1年未満であれば支給日数は30日分、1年以上であれば50日分になります。これは雇用形態ではなく被保険者期間の長さのみで決まります。
Q4. 給与明細で雇用保険料が引かれているか確認できますか?
給与明細の控除欄に「雇用保険料」の項目があれば加入している可能性が高いです。記載がない場合や不明な場合は、会社の労務担当者かハローワークに確認することをおすすめします。
Q5. パートを掛け持ちしていて片方だけ退職した場合はどうなりますか?
もう一方の勤務先で引き続き雇用保険の加入条件(週20時間以上等)を満たして働いている場合、原則として「離職」とはみなされず、高年齢求職者給付金の対象にはなりません。両方の勤務先を離職した時点で申請の対象になります。
Q6. 65歳になった月の途中で退職した場合も対象ですか?
離職日の時点で65歳以上であれば対象です。誕生日をまたぐタイミングでの退職を検討している場合は、事前にハローワークで適用される給付の種類を確認しておくと安心です。
Q7. パートでも会社都合退職なら給付制限はありませんか?
はい。会社都合退職(特定受給資格者等に該当する場合)は、パートであっても原則として給付制限は課されません。雇用形態に関わらず、離職理由の区分で判定されます。
まとめ
- パートでも週の所定労働時間20時間以上・31日以上の雇用見込みがあれば雇用保険に加入しており、65歳以上での離職時に高年齢求職者給付金の対象になる
- 判定基準は契約上の「所定労働時間」であり、シフトによる週ごとの変動だけで加入・非加入が切り替わるわけではない
- 65歳以上で複数のパート先を掛け持ちしている場合は、労働時間を合算できる「雇用保険マルチジョブホルダー制度」の対象になっている可能性がある
- 支給日数は雇用形態ではなく被保険者期間(1年未満なら30日分、1年以上なら50日分)で決まる
- 給与明細で雇用保険料の天引きが確認できない場合は、在職中に会社かハローワークへ確認しておくのが安心
まずは給与明細で雇用保険料が控除されているかを確認し、不明な点があれば管轄のハローワークの窓口で相談することから始めましょう。