定年退職でも失業手当はもらえる?給付制限なしで受給できる条件と手続き【最大150日】

「定年退職は自分から辞めるわけじゃないけど、会社都合でもない。失業手当はもらえるの?」——結論からお伝えすると、定年退職でも失業手当(基本手当)は受給できます。しかも、自己都合退職に課される給付制限は定年退職にはかかりません。7日間の待期期間が終われば支給対象になります。

ただし、注意点が3つあります。65歳以上で退職すると失業手当ではなく別の給付金に切り替わること、「働く意思」がないと受給できないこと、そして65歳未満では年金と同時にもらえないことです。

この記事では、定年退職者が失業手当を受け取るための条件、給付制限の扱い、もらえる金額と日数、定年退職者だけが使える「受給期間延長」の特例まで、順を追って解説します。

結論:定年退職でも失業手当は受給できる(65歳未満なら)

まず全体像を表で整理します。

項目 定年退職の場合
失業手当(基本手当) 受給できる(離職日時点で65歳未満の場合)
給付制限 なし(待期7日間のみ)
離職者区分 一般の離職者(自己都合と同じ給付日数テーブル)
所定給付日数 90日〜150日(雇用保険の加入期間による)
65歳以上で退職 基本手当ではなく高年齢求職者給付金(一時金)の対象

ポイントは、定年退職が「自己都合」でも「会社都合」でもなく、正当な理由のある離職として扱われることです。給付制限がかからない一方で、会社都合(特定受給資格者)のような手厚い給付日数にはならない、いわば中間の位置づけと考えるとわかりやすいでしょう。

定年退職で失業手当をもらうための受給条件

定年退職者が基本手当を受給するには、次の2つの条件を両方満たす必要があります。

条件1:雇用保険の被保険者期間が12ヶ月以上あること

離職日以前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12ヶ月以上あることが必要です。

長年勤めて定年を迎える方であれば、この条件はほぼ問題なく満たしています。注意が必要なのは、定年後の再雇用で勤務時間が週20時間未満に短縮されていたケースなど、雇用保険から外れていた期間がある場合です。離職票が発行されるかどうか、退職前に会社の担当部署に確認しておくと安心です。

条件2:「働く意思と能力」があること——完全リタイアは対象外

失業手当は「働く意思と能力があるのに職に就けない人」のための給付です。そのため、「定年を機に完全に引退する」「もう働くつもりはない」という場合は受給できません

ハローワークで求職申込みを行い、認定日ごとに求職活動の実績を報告する必要があります。「フルタイムでなくても、条件が合えば働きたい」という気持ちがあれば対象になりますので、パート勤務や週数日の仕事を希望する形でも問題ありません。求職活動の進め方については、失業認定申告書の書き方ガイドも参考にしてください。

定年退職に給付制限はある?→ 原則ありません

検索でもっとも多い疑問がこの「給付制限」です。順に整理します。

待期期間7日間はすべての人にある

離職理由にかかわらず、ハローワークで受給手続きをした日から7日間の待期期間があります。この間は支給対象になりません。これは定年退職でも会社都合でも共通です。

定年退職は給付制限の対象外

自己都合で退職した場合、待期期間に加えて給付制限期間(2025年4月以降は原則1ヶ月)が課されますが、定年退職は「正当な理由のある離職」として給付制限がかかりません。待期7日間が終われば、その翌日から支給対象期間が始まります。

実際の初回振込は、待期満了後の最初の失業認定日を経てからになるため、手続きからおおむね1ヶ月前後が目安とされています。

継続雇用(再雇用)を断った場合も原則給付制限なし

「65歳までの再雇用制度はあったけれど、利用せずに定年で退職した」という場合も、60歳以上の定年による離職であれば給付制限はかからない扱いとされています。ただし、離職票の離職理由欄の記載によって扱いが変わる可能性があるため、手続き時にハローワークの窓口で離職理由の区分を必ず確認してください。

定年退職の失業手当はいくら・何日分もらえる?

所定給付日数は90日〜150日

定年退職者は「一般の離職者」区分のため、給付日数は雇用保険の加入期間で決まります。

被保険者期間 所定給付日数
10年未満 90日
10年以上20年未満 120日
20年以上 150日

新卒から定年まで同じ会社に勤めた方なら、多くの場合150日が適用されます。

基本手当日額の計算方法と上限

1日あたりの支給額(基本手当日額)は、離職前6ヶ月の賃金合計を180で割った「賃金日額」に、給付率を掛けて計算されます。60歳以上65歳未満の給付率は45〜80%で、賃金が高かった人ほど率は低くなります。

また、60歳以上65歳未満には基本手当日額の上限額(7,294円・2024年8月改定時点)が設けられています。上限額は毎年8月に見直されるため、実際の金額は手続き時に交付される受給資格者証で確認してください。

: 賃金日額12,000円・勤続30年の場合、日額は上限に達するため約7,294円 × 150日 = 約109万円が総額の目安になります(あくまで概算です)。

65歳以上で退職すると「高年齢求職者給付金」に変わる

分かれ目は退職日。「65歳の誕生日の前々日」までなら基本手当

基本手当を受給できるのは、離職日時点で65歳未満の人です。年齢計算のルール上、65歳に「達する」のは誕生日の前日とされているため、65歳の誕生日の前々日までに退職すれば65歳未満の扱いになるとされています。

高年齢求職者給付金は30日分または50日分の一時金

65歳以上で退職した場合は、基本手当の代わりに高年齢求職者給付金が支給されます。被保険者期間が1年以上なら基本手当日額の50日分、1年未満なら30日分の一時金です。金額は基本手当より少なくなりますが、後述のとおり年金と同時に受け取れるメリットがあります。

高年齢求職者給付金の詳細は、高年齢求職者給付金はいつ振り込まれる?で振込時期まで含めて解説しています。

定年退職者ならではの注意点:受給期間の延長と年金の調整

「少し休んでから働きたい」なら受給期間延長の特例を——最大2年に

失業手当には「離職日の翌日から1年間」という受給期間があり、これを過ぎると給付日数が残っていても打ち切られます。ここで知っておきたいのが、60歳以上の定年等で退職した人だけが使える受給期間延長の特例です。

「定年後はしばらくゆっくりして、それから仕事を探したい」という場合、申請により受給期間を最大1年間延長(合計最大2年間)できます。

延長の申請期限は「離職日の翌日から2ヶ月以内」

この特例には期限があります。離職日の翌日から2ヶ月以内に、住所地を管轄するハローワークへ申請が必要とされています。定年退職後の解放感でうっかり過ごしていると期限が切れてしまうため、「休みたい」と思ったらまず先に延長申請だけ済ませておくのが実利的です。

65歳未満は年金と失業手当を同時にもらえない

60代前半で「特別支給の老齢厚生年金」を受け取れる人が基本手当の受給手続きをすると、求職申込みの翌月から、基本手当の受給期間中は年金が全額支給停止になります。両方を同時に受け取ることはできず、原則として金額の大きいほうを選ぶ判断になります。多くの場合は失業手当のほうが有利とされますが、給付日数や年金額によって逆転することもあるため、年金事務所とハローワークの両方で試算してもらうのが確実です。

なお、65歳以上の高年齢求職者給付金は老齢年金と併給可能です。ここが「65歳の壁」のもう一つの重要な分かれ目です。

受給手続きの流れ【5ステップ】

1. 離職票を受け取る: 退職後、会社から「雇用保険被保険者離職票(1・2)」が届きます。目安は退職後10日〜2週間程度です 2. ハローワークで求職申込み: 住所地を管轄するハローワークで求職申込みと受給資格の決定を受けます。マイナンバーカード、本人名義の通帳、証明写真などが必要です 3. 待期期間(7日間): この間はアルバイト等をせず、失業状態を保ちます 4. 雇用保険受給者初回説明会に参加: 受給資格者証と失業認定申告書を受け取ります 5. 4週間ごとの失業認定日に出席: 原則2回以上の求職活動実績を報告し、認定されると約1週間で指定口座に振り込まれます

よくある質問(FAQ)

Q1. 定年退職は「会社都合」になりますか?

いいえ。定年退職は会社都合(特定受給資格者)ではなく一般の離職者の扱いです。ただし自己都合と違って給付制限はかからないため、「給付日数は自己都合と同じ、開始タイミングは会社都合並みに早い」とイメージするとわかりやすいでしょう。

Q2. 退職金をもらうと失業手当は減額されますか?

減額されません。退職金や企業年金の一時金を受け取っても、基本手当の金額や日数には影響しないとされています。基本手当の計算は離職前6ヶ月の賃金(賞与・退職金を除く)がベースです。

Q3. 定年後の再雇用を途中で辞めた場合はどうなりますか?

再雇用契約の満了(雇止め)で離職した場合は、契約更新の状況によって特定理由離職者等に該当し、給付制限なしで受給できる可能性があります。自分から再雇用を中途退職した場合は通常の自己都合扱い(給付制限1ヶ月)になることがあるため、離職票の離職理由をよく確認してください。

Q4. 失業手当を受給すると家族の扶養から外れますか?

基本手当日額が3,612円以上の場合、受給期間中は健康保険の扶養に入れないのが一般的です。定年退職者は配偶者を自分の扶養に入れているケースのほうが多いですが、ご自身が家族の扶養に入る予定がある場合は、失業保険と扶養の関係(日額3,612円の壁)を確認してください。

Q5. 65歳の誕生日直前に退職すると有利と聞きましたが本当ですか?

離職日が65歳未満なら基本手当(最大150日分)、65歳以上なら高年齢求職者給付金(最大50日分)となるため、総額では65歳未満での退職が有利になるケースがあるのは事実です。ただし、65歳未満では年金が支給停止になる点や、退職日を早めることで給与・退職金・年金額に影響が出る可能性もあるため、金額だけで判断せず総合的な試算をおすすめします。

Q6. 求職活動をせずに受給だけすることはできますか?

できません。働く意思がないのに失業手当を受給すると不正受給にあたり、返還や納付命令の対象になります。「良い条件があれば働きたい」という前提で、認定日ごとに求職活動実績を正しく申告しましょう。

まとめ

  • 定年退職でも、離職日時点で65歳未満なら失業手当(基本手当)を受給できる
  • 給付制限はなし。待期7日間の後、支給対象期間が始まる
  • 給付日数は加入期間に応じて90日・120日・150日
  • 65歳以上の退職は高年齢求職者給付金(30日分または50日分の一時金)に切り替わる
  • しばらく休みたい人は受給期間延長の特例(最大2年)を離職翌日から2ヶ月以内に申請
  • 65歳未満は特別支給の老齢厚生年金と併給不可。どちらが有利か事前に試算を

まずは退職前に会社へ離職票の発行を依頼し、退職後は早めに管轄のハローワークで手続きを始めましょう。制度の金額・要件は改定されることがあるため、最新情報は必ずハローワークインターネットサービスや厚生労働省の公式サイトで確認してください。