ハローワークに求人を出すとき、記入に迷いやすいのが賃金欄です。パートタイマーの場合、正社員とは記入のルールが微妙に異なり、「時給の幅はどう書くか」「通勤手当はどこに記入するか」「試用期間中の賃金は別に書くべきか」といった疑問が出てきます。
この記事では、ハローワーク求人申込書の賃金欄をパートタイマー向けに記入する方法を、具体的な記入例とともに解説します。窓口に提出する前のチェックリストとしても活用してください。
パートの賃金欄で押さえるべき基本
求人申込書(求人票)は、ハローワークの求人者向けシステム(HEWS)からオンラインで入力するか、窓口で所定の様式に手書きして提出します。賃金欄の構成はどちらも同じで、主に以下の項目から成り立っています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 賃金形態 | 月給・日給・時給・年俸など |
| 基本給 | 賃金の主体となる金額 |
| 定額的に支払われる手当 | 職務手当・皆勤手当など |
| 固定残業代 | 固定残業時間と含まれる金額 |
| 通勤手当 | あり/なし、支給上限額 |
| 試用期間 | 有無と試用期間中の賃金 |
| 昇給・賞与 | あり/なし、見込み額 |
パートタイマーの場合、賃金形態は原則「時給」を選択します。月給制や日給制のパートもありますが、ここでは最も一般的な時給制を中心に説明します。
賃金欄の各項目と書き方
賃金形態と基本給(時給)
「賃金形態」欄で「時給」を選択し、基本給の欄に時給額を記入します。
- 記入例:`1,100 円`
- 採用後の経験・スキル評価によって幅がある場合:`1,050 円〜1,200 円`
時給を範囲で記載する場合、幅が大きすぎると求職者に「どうせ最低額で採用されるのでは」という印象を与えることがあります。差は100〜150円程度に収め、幅を設ける理由を「仕事の内容」欄に補足するとよいでしょう。
重要:記入する時給は、勤務地の都道府県が定める最低賃金以上でなければなりません。最低賃金は毎年10月ごろに改定されるため、古い金額のまま記入しないよう注意してください。最低賃金を下回っている場合、ハローワーク窓口で修正を求められます。
各種手当の書き方
定額で支払う手当がある場合は、手当名と月額を記入します。
- 記入例:`職務手当 3,000 円/月` `皆勤手当 5,000 円/月`
手当の全額がすでに時給に含まれているケース(時給にオールインの場合)は、手当欄への記入は不要です。
#### 固定残業代(みなし残業)を設ける場合
固定残業代がある場合、以下の3点を必ずセットで記入します。
1. 固定残業の時間数(例:月20時間分を含む) 2. 固定残業代の金額(例:20,000円) 3. 固定時間を超えた場合は追加で支給する旨
パートタイマーに固定残業代を設ける場合も、正社員と同様の記載が必要です。
深夜手当の書き方
22時〜翌5時の時間帯にシフトがある場合、深夜割増賃金の扱いを明示します。
方法A(手当欄に記載): “` 深夜手当:22時〜翌5時は基本時給の25%増 “`
方法B(深夜込み時給として記載): “` 時給 1,375 円(22時〜翌5時・深夜割増込み) “`
深夜手当を別建てにしておくと、求職者から「何時から割増になるか」の問い合わせが減り、採用後のトラブル防止にもなります。
試用期間中の賃金
試用期間を設ける場合は、期間の長さと試用期間中の時給をセットで記入します。
- 記入例:`試用期間 3か月 / 試用期間中の時給 1,050 円(本採用後 1,100 円)`
試用期間中でも最低賃金は適用されます。また、試用期間中に本採用を取り消す場合は一定期間経過後は解雇予告が必要になるため、制度設計は事前に確認することをおすすめします。
通勤手当の書き方
通勤手当欄には「あり」か「なし」の選択と、上限額を記入します。
- 実費支給(上限あり):`あり(実費・上限 15,000 円/月)`
- 実費支給(上限なし):`あり(実費・上限なし)`
- 定額支給:`あり(一律 5,000 円/月)`
- 支給なし:`なし`
よくあるトラブル:「通勤手当あり」と書いただけで上限額を記載しないと、遠方から応募してきた求職者が「全額もらえる」と勘違いするケースがあります。上限は必ず記入してください。
昇給・賞与
- 昇給:「あり」「なし」を選択。「あり」の場合は時期と見込み額を補足
- 記入例:`昇給あり(年1回・前年度実績 時給20〜50円程度)`
- 賞与:「あり」「なし」を選択。「あり」の場合は支給回数と目安額を記入
- 記入例:`賞与あり(年2回・計1か月分相当)`
パートタイマーに昇給・賞与がない場合は「なし」と明記してかまいません。記載がないと窓口から確認が入ることがあります。
記入例
ケース1:シンプルな時給制パート(手当なし)
“` 賃金形態:時給 基本給:1,100 円 各種手当:なし 通勤手当:あり(実費・上限 10,000 円/月) 試用期間:3か月(試用期間中の時給 1,050 円) 昇給:なし 賞与:なし “`
ケース2:職務手当・深夜シフトあり
“` 賃金形態:時給 基本給:1,100 円 各種手当:職務手当 3,000 円/月、深夜手当(22時〜翌5時:基本時給の25%増) 通勤手当:あり(実費・上限 15,000 円/月) 試用期間:なし 昇給:あり(前年度実績:時給20円程度) 賞与:なし “`
ケース3:月給制のパート(週5日勤務)
月給制のパートで週5日・フルタイムに近い働き方の場合は「月給」を選択し、月額を記入します。
“` 賃金形態:月給 基本給:175,000 円 各種手当:通勤手当 実費(上限 20,000 円/月) 試用期間:3か月(試用期間中の月給 170,000 円) 昇給:あり(年1回) 賞与:なし “`
よくある間違いと確認ポイント
NG1:最低賃金を下回っている
最低賃金は毎年10月ごろに改定されます。昨年の金額をそのまま使い回していると、改定後に下回るケースがあります。記入前に必ず最新の地域別最低賃金を確認してください。
NG2:通勤手当の上限額が未記入
「通勤手当あり」のみでは不十分です。上限を記入しないと求職者とのトラブルになるだけでなく、ハローワーク窓口で修正を求められることがあります。
NG3:時給の幅が広すぎる
`900 円〜1,500 円` のような幅の広い記載は求職者に不信感を与えます。採用基準が明確な場合は幅を狭め、「経験・スキルにより決定」と補足する方法が有効です。
NG4:試用期間中の時給が未記入
試用期間を設けているのに賃金の記載がない場合、窓口から必ず確認が入ります。試用期間の有無と賃金はセットで記入してください。
NG5:深夜手当を含む時給なのかどうかが不明瞭
「深夜手当込み」なのか「別途支給」なのかが不明だと、採用後のトラブルにつながります。どちらの方式かを明確に書きましょう。
よくある質問(FAQ)
Q:パートの賃金欄には「時給」と「月給」どちらで書くべきですか?
A:原則として、時間単位で賃金が変動するパートタイマーは「時給」で記入します。週5日・フルタイムに近い働き方で月額での支払いを予定している場合は「月給」でも問題ありません。実態に合った賃金形態を選択してください。
Q:扶養控除内を希望するパートの場合、賃金欄に特記事項は必要ですか?
A:賃金欄への特記事項は不要です。「仕事の内容」欄や「備考」欄に「扶養範囲内での勤務に関する相談可」と記載しておくと、該当する求職者からの応募を増やしやすくなります。
Q:パートと正社員で、同一業務なのに賃金差を設けてもよいですか?
A:同一労働同一賃金の原則により、職務内容・責任の範囲・配置転換の有無が同じであれば不合理な待遇差は認められません。職務内容に明確な差がある場合は差が生じてもよいとされていますが、判断に迷う場合はハローワーク窓口か社会保険労務士に相談することをおすすめします。
Q:賃金欄を記入ミスした場合はどうすれば直せますか?
A:HEWSからログインして直接修正するか、ハローワーク窓口に連絡して修正手続きを行います。手書き様式で提出済みの場合は窓口での訂正が必要です。詳しい手順は「求人申込書を間違えた時の訂正・再提出の手順」を参照してください。
Q:面接時に実際の時給を変更することはできますか?
A:求人票に記載した賃金と実際に支払う賃金が異なる場合、労働条件の明示義務違反になる可能性があります。採用後に時給を下げることは原則として認められていません。変更が必要な場合は求人票を修正し、求職者に正確な条件を提示してください。
Q:同一労働同一賃金で、通勤手当もパートに支給しなければなりませんか?
A:通勤手当については、正社員に支給しているのにパートには支給しない場合、合理的な理由がなければ不合理な待遇差とみなされます。正社員と同様に通勤手当を支給する、または支給しない場合の合理的な理由を整理しておくことをおすすめします。
まとめ
ハローワーク求人申込書のパート賃金欄で押さえるべきポイントをまとめます。
- 賃金形態は「時給」を選択し、都道府県の最低賃金以上の金額を記入する
- 通勤手当は「あり/なし」に加えて上限額を必ず明記する
- 試用期間を設ける場合は試用期間中の時給も別途記入する
- 深夜シフトがある場合は深夜手当の扱い(別建て or 込み)を明示する
- 時給に幅を持たせる場合は差を100〜150円程度に絞り、理由を補足する
- 昇給・賞与は「あり/なし」どちらでも明記することで窓口確認を防げる
求人申込書全体の書き方については「求人申込書の書き方(エクセル/PDFのテンプレートダウンロードあり)」もあわせて参照してください。記入内容に迷う場合は、最寄りのハローワーク窓口の担当者に直接確認するのが最も確実です。