ハローワークに求人申込書を提出したのに「受理できません」と告げられた――そんな経験をお持ちの事業主の方もいるかもしれません。
求人不受理の主な原因は、労働関係法令の違反歴や求人票の記載内容の問題です。ただし、理由を正確に把握して適切な是正措置をとれば、多くのケースで再申請が可能です。
この記事では、求人申込書が不受理になる主な理由と、該当事業所がとるべき対応手順を具体的に解説します。
求人申込書が不受理になる主な理由
ハローワーク(公共職業安定所)は、職業安定法の規定に基づき、一定の要件を満たさない求人の受理を断ることができます。2022年の職業安定法改正で要件がより明確化され、ハローワーク窓口での運用も厳格になっています。
過去の労働関係法令違反がある
最も多い理由が、労働基準法・最低賃金法・労働安全衛生法などへの違反歴です。是正勧告や送検を受けた事業所は、一定期間、求人の受理を断られる場合があります。
| 違反の種類 | 主な具体例 |
|---|---|
| 労働基準法違反 | 残業代の未払い、法定労働時間の超過 |
| 最低賃金法違反 | 地域別最低賃金を下回る賃金の支払い |
| 労働安全衛生法違反 | 安全衛生基準を満たさない職場環境 |
| 職業安定法違反 | 過去の求人票への虚偽記載 |
求人票の記載内容に問題がある
提出する求人申込書に虚偽の内容や重大な記載不備がある場合も不受理の対象です。
よくある問題点は次のとおりです。
- 実際の賃金・労働時間と異なる条件を記載している
- 業務内容が実態と著しく乖離している
- 固定残業代を設けているのに時間数・金額の明示がない
- 年齢・性別による不当な応募制限など、法令上認められない条件が含まれている
労働条件が法定基準を下回る
最低賃金を下回る賃金や、法定の休日・休憩時間を確保できない条件での求人は受理されません。
提出前に必ず確認すべき基準:
- 賃金:都道府県の地域別最低賃金以上か
- 労働時間:週40時間・1日8時間の法定範囲内か
- 休日:週1日(または4週4日)の法定休日を設定しているか
不受理通知を受けた事業所がとるべき対応手順
不受理の通知を受けても、手順を踏んで対応すれば解決できます。
ステップ1:不受理の理由を正確に把握する
まず、ハローワーク担当者から不受理の具体的な理由を確認します。
1. どの法令・条件が問題とされているか 2. 是正が必要な内容は何か 3. 再申請が可能になる条件・時期はいつか
窓口での説明が不明瞭な場合は、「具体的にどの部分が問題か書面でご説明いただけますか」と遠慮なく依頼してください。
ステップ2:担当部署・労働基準監督署に相談する
不受理の理由が労働基準法等の違反に関連する場合、所轄の労働基準監督署への相談も有効です。
- ハローワーク:再申請の条件・手続きについて
- 労働基準監督署:是正勧告の内容・改善計画の立て方について
両者は連携していますが窓口は別々です。まずハローワークで「何を改善すれば受理されるか」を確認してから、労働基準監督署で改善報告の手順を聞くと効率的です。
ステップ3:是正措置をとって証拠を保管する
問題が特定できたら、速やかに是正措置をとります。改善の記録を残しておくことが、再申請をスムーズにする鍵です。
| 違反の種類 | 是正措置の例 | 保管すべき記録 |
|---|---|---|
| 未払い残業代 | 不足分の支払い | 振込明細・確認書 |
| 求人票の虚偽記載 | 正確な内容への修正 | 修正後の求人申込書 |
| 最低賃金割れ | 賃金規程の改訂 | 改訂後の就業規則・賃金台帳 |
| 固定残業代の記載漏れ | 時間数・金額を明示した書面の作成 | 改訂後の求人申込書 |
ステップ4:是正内容を報告して再申請する
是正措置が完了したら、ハローワークに報告し、改めて求人申込書を提出します。
再申請の際のポイント:
- 是正措置の内容と完了日を説明できるようにしておく
- 必要に応じて是正証明書類(支払明細、就業規則の改訂ページ等)を持参する
- 事前に電話で「いつ再申請できるか」を確認してから来所するとスムーズです
不受理を予防するための提出前チェックリスト
是正後の再申請や、初めて求人を出す事業所が提出前に確認すべきポイントをまとめます。
- [ ] 賃金が地域の最低賃金以上になっているか
- [ ] 所定労働時間が週40時間・1日8時間以内になっているか
- [ ] 週1日以上(または4週4日以上)の休日を設定しているか
- [ ] 就業場所・業務内容が実態と一致しているか
- [ ] 固定残業代を設ける場合、時間数と金額を明示しているか
- [ ] 試用期間中の賃金を明記しているか(本採用と差がある場合は特に重要)
- [ ] 差別的・違法な応募条件が含まれていないか(年齢・性別等)
- [ ] 社会保険・雇用保険の加入状況を正確に記載しているか
- [ ] 前回の求人で是正を求められた箇所を修正しているか
- [ ] 必須記載事項に記入漏れがないか
求人申込書の書き方については「求人申込書の書き方(エクセル/PDFのテンプレートダウンロードあり)」で様式ごとに詳しく解説しています。
よくある質問(FAQ)
不受理になった後、いつから再申請できますか?
是正措置が完了し、ハローワークが認めた時点から再申請できます。違反の種類や是正の内容によって期間は異なるため、担当窓口で直接確認してください。労働基準法違反等で送検された場合は、一定期間(状況によっては数年)が経過するまで受理されないケースもあります。
不受理の決定に異議を申し立てることはできますか?
行政不服申立法に基づく不服申立ては制度上可能です。ただし、不受理の多くは「記載内容の修正」や「是正措置」で解決できるため、まずは担当者と改善策について話し合う方が現実的です。異議申立てと並行して是正作業を進めることもできます。
ハローワークで断られた場合、他の媒体で求人を出せますか?
民間の求人サイトや求人誌など、ハローワーク以外の求人媒体は引き続き利用できます。ただし、不受理の原因が労働条件の問題である場合、他の媒体で同じ条件の求人を出し続けることは法的リスクをともなう可能性があります。根本的な是正を行うことが事業所にとっても長期的に有益です。
求人申込書で記載ミスが多い欄はどこですか?
特に誤りが多いのは固定残業代の記載と試用期間中の賃金です。固定残業代がある場合は「基本給○万円(固定残業代○時間分・○円含む)」という形式で内訳の明示が必要です。また、実態は雇用契約なのに業務委託のような書き方をしているケースも不受理の原因になります。求人票を間違えた場合の修正手順については「求人申込書を間違えた時の訂正・再提出の手順」もあわせてご覧ください。
まとめ
- ハローワークの求人不受理は、主に労働関係法令の違反歴・求人票の記載不備・法定基準を下回る労働条件が原因
- 不受理通知を受けたら、理由確認 → 相談 → 是正措置と記録保管 → 再申請の順で対応する
- 再申請前は提出前チェックリストを活用し、同じ理由での不受理を防ぐ
- ハローワーク以外の求人媒体は利用可能だが、根本的な是正が事業所の信頼維持にもつながる