高年齢雇用継続給付と高年齢求職者給付金の違いは?60歳定年退職で併用できるかを解説

60歳で定年退職を迎えたとき、「そのまま同じ会社で働き続けるか」「一度退職して次を探すか」で、もらえるお金の種類がまったく変わります。名前が似ている「高年齢雇用継続給付」と「高年齢求職者給付金」を混同したまま手続きを進めると、本来もらえたはずの給付を取りこぼすことも。この記事では両者の違いと併用可否を、60歳定年退職者が実際に直面する3つのパターンに分けて整理します。

結論:この2つは「働き続ける人」と「離職した人」向けで別物、併用は原則できない

先に結論からお伝えします。

  • 高年齢雇用継続給付=60歳以降も雇用契約を継続して働く人が、賃金の低下を補うために受け取る給付
  • 高年齢求職者給付金65歳以上で離職し、求職活動をする人が受け取る一時金

この2つは「在職中か」「離職したか」で対象が分かれるため、同じ時点で両方を受け取ることは基本的にできません。どちらを選ぶかは、定年後に「働き続けるか」「離職するか」の選択そのものと直結します。

そもそも何が違う?制度の位置づけを整理する

高年齢雇用継続給付とは(働き続ける人向け)

高年齢雇用継続給付は、60歳到達時点に比べて賃金が下がった状態で働き続ける60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者に対して、賃金の一定割合を上乗せする給付です。定年後に再雇用・再就職して働くものの、給与水準が下がってしまうケースを想定した制度で、雇用保険に加入したまま働いていることが前提になります。

2025年4月の制度改正で給付率の上限が段階的に引き下げられている点も見逃せません。以前に比べて上乗せ額が小さくなっているケースがあるため、「昔聞いた話」のまま試算すると実際の受給額とズレが生じる可能性があります。

高年齢求職者給付金とは(65歳以上で離職した人向け)

高年齢求職者給付金は、65歳以上で雇用保険の被保険者が離職し、ハローワークで求職の申し込みをした場合に受け取れる一時金です。一般の失業給付(基本手当)のように毎月認定を受けて分割で受け取るのではなく、基本手当日額の30日分または50日分が一括で支給されるのが特徴です。

こちらは在職中の給付ではなく、離職して初めて発生する給付です。65歳未満で離職した場合は、高年齢求職者給付金ではなく通常の基本手当(失業保険)の対象になります。

対象年齢・要件の違い一覧

項目 高年齢雇用継続給付 高年齢求職者給付金
対象年齢 60歳以上65歳未満 65歳以上
前提となる状態 在職中(雇用継続) 離職済み・求職中
受給の形 賃金に上乗せして毎月支給 一時金(30日分 or 50日分)
主な要件 60歳到達時比で賃金75%未満に低下等 離職前1年間に被保険者期間6ヶ月以上等
求職活動の要否 不要(働いていることが前提) 必要(求職の申し込みをすること)

60歳定年退職後のよくある3パターン

「自分はどちらに当てはまるのか」を考えるために、定年後の代表的な進路を3つに分けて見ていきます。

パターン1:再雇用で働き続ける→高年齢雇用継続給付の対象になりうる

多くの会社では60歳定年後も「継続雇用制度(再雇用)」で65歳まで働き続けられます。この場合、雇用契約は継続しているため離職には該当せず、給与が定年前より下がっていれば高年齢雇用継続給付の対象になり得ます。

パターン2:定年退職後、65歳未満のうちに退職して求職活動→基本手当(一般の失業給付)

定年退職後にいったん再雇用されたものの、65歳になる前に自己都合・会社都合で完全に離職した場合は、高年齢求職者給付金ではなく通常の基本手当(失業保険)の対象です。この場合、給付日数や受給期間は一般の失業給付の枠組みで計算されます。

パターン3:65歳以降に離職→高年齢求職者給付金

65歳以降まで働き、そこで離職して求職活動をする場合に、初めて高年齢求職者給付金の対象になります。60歳定年時点ではまだ関係のない制度である点に注意してください。

併用できる/できないケースを整理する

高年齢雇用継続給付と基本手当の関係

高年齢雇用継続給付は「働いている人」向け、基本手当は「離職して求職活動をする人」向けなので、同じ月に両方を満額受け取ることはできません。ただし、基本手当を受給し、その後再就職して高年齢雇用継続給付の対象になる、という時系列での切り替えは可能です。この場合、基本手当の受給期間や支給残日数によって高年齢雇用継続給付の給付率が調整される仕組みがあります。

高年齢雇用継続給付と老齢厚生年金の調整

60代前半で働きながら老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金)を受け取っている場合、在職老齢年金の仕組みにより年金の一部が支給停止になることがあります。さらに高年齢雇用継続給付を受け取っていると、年金の支給停止額に追加の調整が入る場合があるため、「給与+年金+雇用継続給付」の合計で考える必要があります。

高年齢求職者給付金との同時受給は可能か

高年齢求職者給付金は離職後に一括で受け取る一時金なので、受給時点で在職していないことが前提です。したがって、在職を前提とする高年齢雇用継続給付と同時に受け取ることはできません。65歳以降に離職して高年齢求職者給付金を受け取った後、再就職して条件を満たせば、その時点から改めて高年齢雇用継続給付(正確には高年齢再就職給付金)の対象になれる可能性はあります。

損しないための選択の考え方

賃金低下率で判断する

高年齢雇用継続給付は、60歳到達時点の賃金と比べてどれだけ下がったかで支給の有無・給付率が決まります。再雇用のオファーを受ける前に、60歳到達時点の賃金(みなし賃金)と提示された給与を比較しておくと、給付を受けられるかどうかの見通しが立てられます。

年齢の節目(60歳・65歳)で選択肢が変わる

  • 60歳時点:再雇用で働き続けるか、退職して基本手当を受けるかの分岐点
  • 65歳時点:それまでの雇用形態にかかわらず、離職すれば高年齢求職者給付金の対象に切り替わる分岐点

このように、同じ「定年」でも60歳と65歳では使える制度がまったく違うため、自分が今どちらの年齢帯にいるかを起点に考えると整理しやすくなります。

シミュレーションの手順

1. 60歳到達時点の賃金(みなし賃金)を確認する 2. 再雇用後の見込み賃金と比較し、低下率を計算する 3. 高年齢雇用継続給付の対象になりそうか、ハローワークまたは会社の人事に確認する 4. 年金を受給中の場合は、年金事務所で在職老齢年金への影響も合わせて確認する

申請手続きの流れ

高年齢雇用継続給付の申請

高年齢雇用継続給付は、事業主を通じてハローワークに申請するのが基本です。個人で単独申請するケースは多くなく、会社の人事・総務担当者が手続きを進めることがほとんどです。初回の支給申請から、以降は原則2ヶ月ごとに継続申請が必要になります。

高年齢求職者給付金の申請

高年齢求職者給付金は、離職後に本人がハローワークで求職の申し込みをした上で申請します。一般の失業給付と同様に離職票の提出が必要です。

ステップ

1. 離職票を勤務先から受け取る 2. 住所地を管轄するハローワークで求職の申し込みをする 3. 必要書類を提出し、高年齢求職者給付金の受給資格決定を受ける 4. 一時金として支給される

必要書類チェックリスト

  • 雇用保険被保険者離職票
  • 雇用保険被保険者証
  • マイナンバーカードまたは通知カード
  • 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
  • 写真(ハローワークにより必要な場合あり)

窓口で相談する際のポイント

事前に準備すべき資料

窓口相談をスムーズにするために、60歳到達時点の給与明細や雇用契約書(再雇用後のもの)を持参すると、その場で高年齢雇用継続給付の対象になりそうかを確認してもらいやすくなります。

聞いておくべき質問リスト

  • 自分の場合、高年齢雇用継続給付の対象になるか
  • 年金を受給している場合、支給停止額はどう変わるか
  • 65歳になったときに離職を検討している場合、高年齢求職者給付金の見込み額はどれくらいか

窓口では制度の一般論だけでなく、「自分の給与水準・年金加入状況」を伝えた上で試算してもらうと、より実態に即した回答が得られます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 高年齢雇用継続給付と高年齢求職者給付金、どちらが得ですか?

前提となる状況(働き続けるか離職するか)が違うため単純比較はできません。働き続ける意思があれば高年齢雇用継続給付、離職して求職活動をするなら高年齢求職者給付金というように、目的に応じて選ぶものと捉えるのが適切です。

Q2. 60歳で定年退職し、すぐに再雇用された場合はどちらが対象ですか?

雇用が継続していれば離職に該当しないため、賃金が下がっていれば高年齢雇用継続給付の対象になり得ます。高年齢求職者給付金は対象外です。

Q3. 高年齢雇用継続給付を受けながら年金ももらえますか?

併給自体は可能ですが、在職老齢年金の仕組みにより年金の一部が支給停止される場合があり、さらに高年齢雇用継続給付を受け取っていると調整が加わることがあります。年金事務所での確認をおすすめします。

Q4. 高年齢求職者給付金は何度でももらえますか?

要件を満たせば、65歳以降に離職・再就職を繰り返すたびに受給できる可能性があります。ただし、その都度の被保険者期間などの要件を満たす必要があります。

Q5. 65歳になる直前に離職した場合はどうなりますか?

離職日の時点の年齢で判定されます。65歳未満での離職は通常の基本手当、65歳以降での離職は高年齢求職者給付金が対象です。誕生日の前後で扱いが変わるため、離職日の設定は事前に確認しておくと安心です。

Q6. 高年齢雇用継続給付は自分で申請できますか?

制度上は事業主経由での手続きが基本です。まずは勤務先の人事・総務担当者に相談し、必要に応じてハローワークに問い合わせるとよいでしょう。

Q7. 2025年の制度改正でどう変わりましたか?

高年齢雇用継続給付の給付率上限が引き下げられ、以前より上乗せ額が小さくなる方向で見直されています。対象になるかどうかや金額の見込みは、必ず最新の情報でハローワークに確認してください。

まとめ

  • 高年齢雇用継続給付は働き続ける人(60〜65歳未満)向け、高年齢求職者給付金は離職した人(65歳以上)向けで、対象がそもそも異なる
  • 在職を前提とする給付と離職を前提とする給付のため、同時併用は原則できない
  • 60歳での再雇用時、65歳での離職時という2つの節目で選択肢が変わるため、自分がどちらの局面にいるかをまず整理する
  • 年金を受給中の場合は、在職老齢年金との調整も含めて確認する
  • 2025年の制度改正で給付率が変更されているため、最新の金額感はハローワークや年金事務所で必ず確認する

制度の名前が似ているために混同しやすいポイントですが、「今、働いているか、離職しているか」を軸に考えると整理しやすくなります。迷ったら早めに管轄のハローワークで自分のケースを相談してみてください。