60歳で定年を迎えた後に新しい仕事が決まったとき、「再就職手当はもらえるの?」と疑問に思う方は少なくありません。結論からいうと、60歳以降でも条件を満たせば再就職手当を受け取ることができます。ただし、離職時の年齢や退職の理由によって適用されるルールが異なるため、ポイントをしっかり押さえておくことが大切です。
この記事では、60歳以降の再就職手当について、基本条件・定年退職時の特殊ルール・支給額の計算方法・申請手順を解説します。65歳以上の方に適用される高年齢求職者給付金との違いも整理しているので、ぜひ参考にしてください。
再就職手当とは?まず基本をおさえておこう
再就職手当は、雇用保険の失業給付(基本手当)を受けている期間中に就職が決まったとき、残っている給付日数に応じて一括で受け取れる手当です。就業促進手当の一種として位置づけられています。
「失業給付を最後まで受け取り切ってから就職したほうが得」という誤解が広まっていますが、再就職手当があるおかげで、早く就職するほど受け取れる金額が大きくなる仕組みになっています。
再就職手当と失業給付の関係
就職が決まると失業給付の受給はストップしますが、残っていた給付日数の60〜70%相当が再就職手当として一括で支給されます。早期就職で残日数が多いほど支給額も大きくなるため、就職活動を急いで損になることはありません。
60歳以降に再就職手当をもらえる基本条件
年齢を問わず共通して求められる受給条件は次のとおりです。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 受給資格者であること | ハローワークで求職の申込みを行い、失業給付の受給資格を得ていること |
| 残日数が1/3以上あること | 就職日の前日時点で所定給付日数の3分の1以上が残っていること |
| 1年超の雇用見込みがあること | 就職先での雇用が1年を超えて続くと見込まれること |
| 雇用保険の被保険者になること | 就職先で雇用保険に加入すること(週20時間以上・31日以上の雇用見込みが目安) |
| 待機期間終了後の就職であること | 受給手続き後7日間の待機期間が終わってから就職すること |
| 前の雇用主への再就職でないこと | 離職した会社に再び雇われていないこと |
給付制限がある場合は注意が必要
自己都合退職の場合、通常は2ヶ月の給付制限期間があります。この期間中に就職した場合は再就職手当を受け取れません。
ただし、後述するように定年退職は原則として給付制限の対象外です。定年退職後に就職した場合は、給付制限の縛りを心配する必要はほとんどありません。
定年退職後(60〜64歳)の特殊ルール
定年退職は「会社都合」か「自己都合」か?
定年退職は、会社都合でも自己都合でもなく独立した離職理由として扱われます。重要なポイントは次の2点です。
- 給付制限がかからない: 自己都合退職に課される2ヶ月の給付制限がなく、7日間の待機期間後すぐに失業給付を受け取れる
- 所定給付日数が長い: 特定受給資格者または特定理由離職者として扱われるため、通常の自己都合退職より長い給付日数が適用される
定年退職後にハローワークへ行く際は、離職票の離職理由欄を確認し、正しく申告することが大切です。
60〜64歳の所定給付日数
定年退職など特定受給資格者・特定理由離職者として認定された場合、60〜64歳の所定給付日数は次のとおりです。
| 被保険者期間 | 所定給付日数 |
|---|---|
| 1年未満 | 90日 |
| 1年以上5年未満 | 180日 |
| 5年以上10年未満 | 240日 |
| 10年以上20年未満 | 270日 |
| 20年以上 | 330日 |
勤続年数が長いほど給付日数が多くなります。再就職手当の計算ベースとなる残日数も大きくなるため、長年勤めて定年退職した方ほど早期就職のメリットが大きくなります。
再雇用(嘱託)として同じ会社に残る場合は対象外
定年後に同じ会社で嘱託社員などとして働き続ける場合は、再就職手当を受け取れません。「離職前の事業主に再び雇用されたもの」は受給対象外と明確に定められているためです。
再就職手当を受け取るには、定年退職後に別の会社・事業主のもとで就職することが必要です。
65歳以上の場合:高年齢求職者給付金との違い
65歳以上で離職した場合は、通常の「基本手当」ではなく「高年齢求職者給付金」という異なる制度が適用されます。
高年齢求職者給付金の特徴
- 一時金(一括払い): 被保険者期間に応じて30日分または50日分の基本手当相当額が一括で支給される
- 再就職手当は受け取れない: 高年齢求職者給付金は「基本手当」とは異なる給付のため、再就職手当の対象外となる
- 年金との同時受給が可能: 老齢年金と同時に受け取ることができる
65歳以降に離職した方は、就職が早く決まっても再就職手当は受け取れません。その代わり、一時金として手続きから比較的短期間で受け取れるというメリットがあります。
64歳11ヶ月で離職した場合はどうなる?
65歳の誕生日の前々日以前に離職した場合は、通常の基本手当の受給資格を取得できます。その後65歳を迎えても基本手当を受け取り続けることができ、再就職手当の対象にもなります。
「もうすぐ65歳だから再就職手当をあきらめよう」と思っている方も、65歳前に離職して受給手続きを済ませていれば受け取れる可能性があります。受給期間中に65歳になった場合はハローワーク窓口で確認してみてください。
再就職手当の支給額の計算方法
支給額は「基本手当日額 × 残り給付日数 × 給付率」で算出します。
給付率の決まり方
就職日前日の残日数が多いほど給付率が高くなります。
| 就職日前日の残日数 | 給付率 |
|---|---|
| 所定給付日数の2/3以上 | 70% |
| 所定給付日数の1/3以上2/3未満 | 60% |
計算例:定年退職後に早期就職した場合
前提条件
- 基本手当日額: 6,000円(離職前賃金から算出)
- 所定給付日数: 150日
- 就職日前日の残日数: 110日(150日の約73% → 2/3以上)
支給額 $$6{,}000円 × 110日 × 70\% = \mathbf{462{,}000円}$$
残日数110日のうち70%相当が一括で受け取れます。同じ条件で残日数が60日(1/3以上2/3未満)になると、支給額は 6,000円 × 60日 × 60% = 216,000円 と大きく変わります。早く就職するほど有利なことがわかります。
基本手当日額の上限について
60〜64歳の基本手当日額には年齢別の上限額が設定されています。
上限額は毎年8月1日に見直されます。現在の上限額はハローワーク窓口または厚労省の公式サイトでご確認ください。
再就職手当の申請手順
ステップ1:就職が決まったらすぐにハローワークへ連絡する
就職が内定・決定したら、就職日の前日までにハローワークに報告します。連絡が遅れると受給資格に影響が出る場合があります。窓口への直接訪問のほか、電話での連絡も可能です。
ステップ2:採用証明書を就職先に作成してもらう
就職先の会社に採用証明書の作成を依頼します。書式はハローワーク窓口またはハローワークインターネットサービスからダウンロードできます。
ステップ3:申請書類をハローワークに提出する
就職から1ヶ月後以降に、次の書類をハローワークへ提出します。
- 再就職手当支給申請書(ハローワーク窓口で受け取る、または電子申請も可)
- 採用証明書
- 雇用保険受給資格者証
申請期限は就職日の翌日から起算して1ヶ月以内です。この期限を過ぎると受給できなくなるため、就職が決まったら早めに準備を始めましょう。
ステップ4:支給決定・振込
書類審査後、指定口座に支給額が振り込まれます。通常は申請から数週間程度かかります。
再就職手当をもらえないケースに注意
次のいずれかに該当する場合は受給できません。
- 残日数が所定給付日数の1/3未満: 受給期間の終盤での就職は対象外
- 前職の会社への再就職: 定年後の再雇用(嘱託・契約社員)を含む
- 1年以内に終了する雇用: 短期アルバイト・期間限定の有期契約
- 雇用保険に加入しない働き方: 週20時間未満のパートタイムなど
- 給付制限期間中の就職: 自己都合退職で給付制限が残っているケース(定年退職は通常該当しない)
- 65歳以上で離職した場合: 高年齢求職者給付金の対象となるため対象外
よくある質問(FAQ)
Q. 定年退職後、ハローワークへの手続きはいつまでにすればよいですか?
離職後1年間が受給期間です。この期間内に手続きをしないと、失業給付自体を受け取れなくなります。定年退職後はできるだけ早め(目安として退職翌日〜1週間以内)にハローワークへ行くことをおすすめします。
Q. 再就職手当をもらうと、次に失業したときの給付日数は減りますか?
再就職手当を受け取ること自体は、次回の失業給付の受給資格や日数に直接影響しません。次の会社で所定の被保険者期間(12ヶ月など)を満たせば、新たに受給資格を取得できます。
Q. パートやアルバイトで就職しても再就職手当はもらえますか?
週20時間以上・31日以上の雇用見込みがあり、雇用保険の被保険者となる場合は受け取れます。加えて1年を超えて雇用が続く見込みが必要なため、短期アルバイトは対象外です。
Q. 65歳以降に就職した場合、再就職手当はどうなりますか?
65歳以上で新たに離職した場合は高年齢求職者給付金の対象となり、再就職手当は受け取れません。ただし、65歳前に離職して基本手当の受給手続きを済ませている場合は対象になります。
Q. 定年後に自営業・フリーランスを始めた場合はどうなりますか?
雇用される形でなく自営業を始めた場合も「就業」として扱われますが、通常の再就職手当ではなく就業手当の対象になる場合があります。支給条件が異なるため、ハローワーク窓口で詳細を確認することをおすすめします。
Q. 申請期限(1ヶ月)を過ぎてしまいましたが、どうすればよいですか?
申請期限を過ぎると原則として受給できません。期限が近づいている場合はすぐにハローワークへ相談してください。申請の見通しが立たない事情がある場合は、窓口で個別対応してもらえる場合もあります。
Q. 就職後すぐに会社が倒産・解雇になった場合はどうなりますか?
再就職手当を受け取った後1年以内に離職した場合、次回の就職時に「就業促進定着手当」が受け取れる場合があります。また新たな離職理由次第で次の受給資格も取得できます。詳しくはハローワーク窓口にご相談ください。
まとめ
- 60〜64歳の方は通常の再就職手当を受け取れる(残日数1/3以上、1年超雇用見込みなどの条件を満たした場合)
- 定年退職は給付制限の対象外:退職後すぐにハローワークへ行けば、2ヶ月待たずに就職活動を始められる
- 65歳以降に離職した方は高年齢求職者給付金の対象:再就職手当は原則受け取れないが、65歳前に受給手続きをしていれば対象になる
- 残日数が多いほど支給額が増える:早期就職で最大70%の給付率が適用される
- 申請期限は就職日翌日から1ヶ月以内:期限厳守。就職が決まったら採用証明書の準備をすぐに始める
- 前職の会社への再雇用(嘱託など)は対象外:定年後に別の会社へ転職する場合のみ受け取れる
定年後の新しい働き方を模索している方にとって、再就職手当は「早く動いた人へのボーナス」のような制度です。条件の確認とスムーズな手続きで、経済的な余裕を持って次のステージに踏み出してください。
*本記事の制度内容・金額・日数は執筆時点の情報をもとにしています。制度は改正される場合があります。最新情報はハローワークまたは厚生労働省の公式サイトでご確認ください。*