退職後に国民健康保険(国保)へ切り替えると、保険料が思ったより高くて驚く方が少なくありません。「失業給付をもらいながら、さらに高い保険料を払わないといけないの?」という不安は当然です。この記事では、失業保険受給中の国保料が実際にいくらになるかを年収別の早見表で示すとともに、会社都合退職者が使える大幅軽減制度の申請方法まで一気通貫で解説します。
先に結論:失業給付は保険料に影響しない・前年所得で決まる
重要なポイントを最初に伝えます。
- 失業保険(雇用保険の基本手当)は国保の所得に含まれない
- 保険料は前の年(1月〜12月)の給与所得をもとに計算される
- したがって、受給中に給付額が増えても保険料は変わらない
つまり「失業給付をもらうから保険料が上がる」ことはありません。ただし退職前の収入が多かった場合、退職初年度の保険料が在職中より高くなるケースがあります。それが多くの人を悩ませる本質的な問題です。
国民健康保険料の計算の仕組み
保険料の3つの構成要素
国保の保険料は市区町村ごとに異なりますが、基本的に次の要素から成り立っています。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 所得割 | 前年の給与所得に一定率をかけた額 |
| 均等割 | 世帯内の加入者1人ごとに定額でかかる額 |
| 平等割 | 世帯ごとに定額でかかる額(設けない自治体もあり) |
40〜64歳の方は上記に加えて介護保険料分も上乗せされます。
「前年給与所得」が計算のベース
保険料の核心は所得割です。算定の基礎は給与収入から給与所得控除を引いた後の給与所得になります。
たとえば前年の給与収入が400万円であれば、給与所得控除後の給与所得は約274万円程度です。この274万円に保険料率を掛けたものが所得割になります。
失業給付は所得に含まれない——翌年も影響なし
雇用保険の失業手当(基本手当)は非課税扱いで、国保の所得割計算からも除外されます。受給中に保険料が跳ね上がることも、翌年の保険料計算に影響することもありません。この点は安心してください。
年収別!国民健康保険料の目安早見表
以下は東京23区の保険料率を参考にした概算です(40歳未満・単身世帯・前年収入のみで算出)。保険料率は市区町村によって異なるため、実際の金額は各自治体の窓口またはウェブサイトで試算してください。
| 前年給与収入 | 前年給与所得(概算) | 年間保険料の目安 | 月額換算 |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 約198万円 | 約22〜27万円 | 約1.8〜2.3万円 |
| 400万円 | 約274万円 | 約30〜36万円 | 約2.5〜3.0万円 |
| 500万円 | 約356万円 | 約37〜44万円 | 約3.1〜3.7万円 |
年収300万円のケース
給与所得約198万円が基準になります。所得割は比較的抑えられますが、均等割も加わると年間22〜27万円程度になります。任意継続保険料と比較して低い方を選ぶのが基本戦略です。
年収400万円のケース
給与所得約274万円では所得割の影響が大きくなり、月換算で2.5〜3万円程度になります。在職中は会社と折半していた社会保険料の倍以上になる場合もあるため、注意が必要です。
年収500万円のケース
給与所得約356万円のケースでは月3万円超になることもあります。この収入帯では任意継続(上限あり)との差額比較が特に重要になります。
最大7割軽減!非自発的失業者の保険料軽減特例
軽減の対象になる人
会社都合退職・倒産・解雇などで職を失った特定受給資格者、または育児・介護・セクハラなど正当な理由のある自己都合退職の特定理由離職者(理由1)が対象です。
判断の目安は雇用保険受給資格者証に記載された離職理由コードです。コード11・12・21〜23・31〜34などが対象になることが多いですが、詳細はハローワーク窓口で確認してください。
軽減の仕組み:前年給与所得を30%で計算
対象者は、所得割の計算に使う前年給与所得を30%に圧縮してもらえます。
たとえば前年給与所得が200万円の場合、軽減後は60万円として保険料を計算します。保険料率10%の自治体なら所得割が20万円→6万円に下がる計算です。年間で数万〜十数万円の節約につながります。
軽減後の保険料目安
| 前年給与収入 | 通常の年間保険料 | 軽減後の年間保険料 |
|---|---|---|
| 300万円 | 約22〜27万円 | 約13〜17万円 |
| 400万円 | 約30〜36万円 | 約16〜21万円 |
| 500万円 | 約37〜44万円 | 約20〜25万円 |
※概算。世帯構成・自治体の料率によって変わります。
申請の手順と必要書類
軽減は自動適用されません。必ず自分で申請してください。
1. 退職後にハローワークで受給資格者証を取得する 2. 市区町村の国保窓口へ持参し、軽減申請書を提出する 3. 軽減後の保険料で納付書が発行される
申請を忘れると通常の(高い)保険料がそのまま請求されます。国保加入手続きと同時に申請するのがベストです。
3つの選択肢を比較してから決める
退職後の健康保険は次の3択から選びます。国保一択ではないので、保険料を比べてから手続きしましょう。
選択肢①:国民健康保険に加入する
前年所得をもとに計算。軽減特例が使える場合はコストを抑えられます。
選択肢②:任意継続保険(最大2年間)
退職前に加入していた健康保険を最長2年間継続できます。退職日の前日まで2ヶ月以上加入していることが条件。保険料は退職時の標準報酬月額をベースに算出(上限あり)し、全額自己負担です。収入が多かった人ほど国保との差が縮まるケースがあります。
選択肢③:配偶者などの扶養に入る
配偶者が勤務先の健康保険に加入している場合、年収130万円未満などの条件を満たすと扶養に入れます。ただし失業給付の日額が3,612円以上の期間は「収入あり」とみなされ、扶養に入れない健保組合が多いので注意が必要です。
手続きの流れ:退職翌日から14日以内が原則
退職後14日以内に市区町村の窓口へ
健康保険の資格喪失日(退職日の翌日)から14日以内に国保加入の届け出が必要です。
14日を過ぎても加入自体はできますが、資格喪失日にさかのぼって保険料が発生します。空白期間の保険料は後から請求されるので、早めに手続きするのが得策です。
窓口に持参するもの
- 健康保険資格喪失証明書(退職後に会社またはマイナポータルで取得)
- 本人確認書類(マイナンバーカード等)
- 印鑑(不要な自治体もあり)
- 雇用保険受給資格者証(軽減特例の申請に必要)
軽減特例を申請する場合は受給資格者証の取得後に窓口へ行くと、加入と軽減申請を1回で済ませられます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 失業給付をもらうと翌年の保険料が上がりますか?
上がりません。雇用保険の基本手当は非課税所得で、翌年の住民税にも国保料の所得割算定にも含まれません。
Q2. 保険料が高くて払えない場合は?
市区町村に「保険料の減額・猶予・分割納付」制度があります。また収入が著しく減少した場合は所得更正の申請も可能です。支払いに困ったらまず窓口で相談してください。
Q3. 途中で就職して健康保険に加入したら国保はどうなる?
就職して勤務先の健康保険に加入した日をもって国保は自動失効します。加入月の翌月からは国保料が発生しないため、月の途中で就職した場合は加入月まで分の保険料を支払えばOKです。
Q4. 前年に無収入だった場合(離職から2年目以降など)は?
前年所得がゼロまたは大幅に少ない場合、所得割はほぼゼロになり均等割のみになります。さらに世帯の住民税が非課税であれば、均等割に対して7割・5割・2割の法定軽減が適用されます。
Q5. 夫婦2人で国保に加入するといくらになりますか?
所得割は各自の所得に基づいて計算され、均等割は人数分かかります(2人なら均等割×2)。世帯全体の保険料シミュレーションは市区町村窓口に依頼できます。
まとめ
- 失業給付(基本手当)は国保料の計算対象外。受給中に保険料が増えることはない
- 保険料は前年の給与所得をもとに算定。年収400万円なら月2.5〜3万円が目安(東京23区参考)
- 会社都合・倒産・解雇などで退職した人は「非自発的失業者の軽減特例」で前年給与所得を30%に圧縮できる。窓口での申請を忘れずに
- 国保・任意継続・扶養の3択を保険料で比較してから決める
- 国保加入の届け出は退職後14日以内。雇用保険受給資格者証も同時に持参すると効率的
失業保険の受給が終わった後、配偶者の扶養に戻る手続きについては別記事で詳しく解説しています。扶養再加入のタイミングと必要書類も確認しておきましょう。