給付制限中は扶養に入れる?社会保険・税の扶養それぞれの条件と手続きを解説【2025年版】

自己都合退職をすると、離職後すぐには失業手当を受け取れない「給付制限期間」があります。この期間、配偶者の扶養に入れるのかと疑問に思う方は多いでしょう。保険料の出費を少しでも抑えたいという切実な問いです。

結論から言えば、給付制限中は社会保険の扶養に入れるケースがほとんどです。 失業手当を受け取っていない期間は収入がゼロとみなされるため、年収130万円の壁を超えないと判断されることが多いからです。

ただし「社会保険の扶養」と「税の扶養」は仕組みが異なり、それぞれ別の条件で判断されます。また、健康保険組合によって独自の基準を設けているところもあるため、配偶者の会社への事前確認が欠かせません。

この記事では、給付制限中の扶養に入れる条件・手続きの流れ・受給開始後の切り替えタイミングまで、社会保険と税の扶養に分けて詳しく解説します。

そもそも給付制限期間とは?受給中との違いを整理する

扶養に入れるかどうかを判断する前に、「給付制限中」と「受給中」の違いを正確に理解しておくことが重要です。この2つを混同すると手続きが誤った方向に進んでしまいます。

失業手当を受け取るまでの流れ

離職後にハローワークで求職申し込みをすると、まず7日間の待機期間があります。この期間はアルバイトも含め就労できません。その後、退職理由によって「給付制限期間」が上乗せされます。

2025年4月改正後の給付制限期間

2025年4月の雇用保険改正で、自己都合退職の給付制限期間が短縮されました。

退職理由 改正前 改正後(2025年4月〜)
自己都合退職(5年で2回以下) 2ヶ月 1ヶ月
自己都合退職(5年で3回以上) 3ヶ月 3ヶ月(変わらず)
会社都合退職・特定理由離職 なし なし(7日待機のみ)

給付制限中と受給中の違い

  • 給付制限中:ハローワークに求職申し込み済みだが、給付制限期間のため失業手当が振り込まれない状態
  • 受給中:給付制限が終わり、実際に基本手当が振り込まれている状態

扶養に入れるかどうかの判断は、この2つで異なります。

社会保険の扶養:給付制限中は入れるか

社会保険の扶養(被扶養者)とは、配偶者の会社の健康保険に追加で加入する制度です。自分で保険料を払わなくてよくなり、国民年金の第3号被保険者にもなれます。

扶養に入れる基準:日額3,612円・年収130万円の壁

健康保険の扶養に入れるかどうかは、今後1年間の収入見込みで判断されます。一般的な基準は以下のとおりです。

  • 年収見込み:130万円未満(60歳以上・障害者は180万円未満)
  • 月収換算:108,333円以下
  • 日額換算3,611円以下(130万円 ÷ 360日)

この「日額換算」が重要です。失業手当の基本手当日額が3,612円以上の場合、受給中は扶養に入れません。3,611円以下なら受給中も扶養のままでいられます。

給付制限中の判断:日額は「0円」か「受給予定額」か

ここが最も重要なポイントです。給付制限中は失業手当を受け取っていないため、実際の収入は0円です。このため多くの健康保険では「給付制限中は収入ゼロとして扶養に入れる」と判断します。

ただし、健康保険組合によって運用が異なります。

健康保険の種類 給付制限中の取り扱い
協会けんぽ(主に中小企業) 一般的に扶養可。給付制限中は日額0円とみなす
健康保険組合(大企業) 組合によって異なる。「離職票記載の基本手当日額」で判断するところも
国民健康保険(自営業・フリーランスの夫) 「扶養」制度がなく、別々に加入が必要

必ず配偶者の会社の担当部署(総務・人事)か健康保険組合に事前確認してください。 窓口によって「給付制限中だから入れます」と即答されることもあれば、組合独自の書式での申請を求められることもあります。

国民年金の第3号被保険者にもなれる

健康保険の被扶養者に認定されると、同時に国民年金の第3号被保険者にもなれます。第3号は配偶者(第2号被保険者)が加入している厚生年金制度から保険料を拠出するしくみのため、自分で国民年金保険料を払わなくて済みます。

扶養に入れなかった場合は、国民年金の第1号被保険者として毎月保険料を納める必要があります。

受給開始後:扶養の切り替えタイミング

給付制限が終わって失業手当の受給が始まると、扶養の条件を再度確認する必要があります。ここでの手続き漏れが最もよくあるトラブルです。

基本手当日額が3,612円以上の場合

受給開始と同時に扶養から外れる手続きが必要です。

1. 配偶者の会社に「健康保険被扶養者削除」の届け出を提出 2. 国民健康保険に自分で加入(市区町村の窓口) 3. 国民年金を第1号被保険者として納付

受給が終わったら、再び扶養に戻る手続きをします。

基本手当日額が3,611円以下の場合

受給中も扶養のままでいられます。ただし健康保険組合によっては「受給中は一時的に扶養を外れる」というルールを設けているところもあるため、こちらも事前確認が必要です。

手続きを忘れるとどうなるか

受給開始後も扶養の削除手続きをしなかった場合、後日遡って削除を求められ、過去に受給していた期間の国民健康保険料の支払いが発生することがあります。給付制限終了の連絡をハローワークから受けたら、速やかに配偶者の会社に連絡しましょう。

税の扶養:失業手当は収入に含まれない

「税の扶養」は社会保険の扶養とはまったく別の制度です。配偶者控除・配偶者特別控除を申告できるかどうかに関わり、こちらは年間の所得で判定します。

失業手当は非課税:年収の計算に含まれない

失業手当(基本手当)は所得税が非課税です。給付制限中・受給中を問わず、失業手当は税の扶養を判断する「年収」には一切含まれません。

税の扶養の判定に含まれるのは、給与収入・事業収入・不動産収入などの課税所得です。在職中に得た給与収入がある場合、そちらの金額で判断します。

配偶者控除・配偶者特別控除の条件

控除の種類 年収の条件(配偶者本人の課税所得)
配偶者控除 103万円以下
配偶者特別控除 103万円超〜201万6千円未満

たとえば退職前の1〜3月に給与収入が80万円あって、その後は失業手当のみだった場合、年収は80万円(失業手当は除外)として計算されます。103万円以下なら配偶者控除を申告できます。

給付制限中に扶養に入る手続きの流れ

STEP 1:退職・離職票の受け取り

前の会社を退職すると、ハローワークへの提出に必要な離職票が後日送付されます。通常、退職後10〜14日ほどかかります。

STEP 2:配偶者の会社へ扶養の申請

配偶者の勤め先の総務・人事部門に「扶養に入りたい」と連絡し、申請書類を受け取ります。一般的に必要な書類は以下のとおりです。

  • 健康保険被扶養者(異動)届
  • 離職票のコピー(または雇用保険受給資格者証のコピー)
  • 非課税証明書(前年収入が確認できるもの)
  • マイナンバー関連書類(組合によって異なる)

STEP 3:ハローワークで求職申し込み

離職票を持ってハローワークで求職の申し込みを行います。この日から7日間の待機期間が始まり、その後給付制限期間に入ります。受給資格が決定すると「雇用保険受給資格者証」が発行されます。

STEP 4:給付制限終了・受給開始時に扶養を見直す

基本手当日額が3,612円以上の場合、受給開始日以降は扶養から外れる届け出が必要です。手続きは自動的に行われないため、自分で動く必要があります。

STEP 5:受給終了後に扶養に戻る

失業手当の受給期間が終わったら、再び配偶者の扶養に入る申請を行います。「雇用保険受給資格者証」の「支給終了」欄を確認し、配偶者の会社に提出します。

よくある質問(FAQ)

Q. 給付制限中に扶養に入るには、ハローワークへの届け出が必要ですか?

扶養に入る手続き自体はハローワークではなく、配偶者の会社(健康保険組合)への申請です。ただし申請書類として離職票や雇用保険受給資格者証のコピーを求められることが多いため、ハローワークでの手続きと並行して進めると効率的です。

Q. 健康保険組合に確認したら「給付制限中でも扶養に入れない」と言われました。どうすればいいですか?

その場合は、国民健康保険に自分で加入する必要があります。市区町村の窓口で、退職日の翌日から14日以内に加入手続きをしてください。加入が遅れると保険料が遡って請求されます。給付制限中だけ国民健康保険に加入し、受給終了後に扶養に戻るという選択肢もあります。

Q. 配偶者の健康保険が組合健保の場合、扶養に入れないことが多いですか?

組合健保は独自の審査基準を持つところがあるため、協会けんぽよりも審査が厳しいケースはあります。ただし「給付制限中は扶養可」とする組合も多く、一概には言えません。配偶者の会社に直接確認するのが確実です。

Q. 扶養に入っていても、求職活動はしないといけませんか?

はい。扶養の有無と失業手当の受給資格は別の制度です。失業手当を受け取るためには、ハローワークへの求職申し込みと定期的な求職活動(就職活動の実績)が必要です。扶養に入っていることで求職活動の義務が免除されるわけではありません。

Q. 受給終了後、夫の扶養に戻るタイミングはいつですか?

受給終了日の翌日から扶養に入れます。「雇用保険受給資格者証」に支給終了の記載がされるので、その書類を持って配偶者の会社に申請します。受給が終わったらできるだけ早めに手続きすることをお勧めします。

Q. 失業手当を受け取らない選択をすれば、ずっと扶養のままでいられますか?

失業手当を受け取らない(受給手続きをしない)という選択をすれば、収入がない状態が続くため社会保険の扶養にとどまれます。ただし、失業手当は離職前の保険料から計算された給付金であり、使わなければ消えてしまいます。再就職活動をしながら受給するほうが経済的には有利です。

Q. 国民年金を第3号から第1号に切り替えると、将来の年金額は変わりますか?

受給中に第1号被保険者として保険料を納付した分は、国民年金(老齢基礎年金)の受給額に反映されます。第3号の期間も同様に年金期間としてカウントされます。どちらも年金額の計算に影響するため、切り替えの漏れや手続きの遅延がないよう注意してください。

まとめ

  • 給付制限中は失業手当を受け取っていないため、社会保険の扶養に入れるケースが多い
  • ただし健康保険組合によって基準が異なるため、配偶者の会社への事前確認が必須
  • 失業手当は非課税のため、税の扶養(配偶者控除など)の年収計算には含まれない
  • 給付制限が終わり受給が始まったら、基本手当日額が3,612円以上の場合は速やかに扶養から外れる届け出が必要
  • 受給終了後は翌日から扶養に戻ることができる。手続きは自動ではないので忘れずに
  • 2025年4月の改正で自己都合退職の給付制限は2ヶ月から1ヶ月に短縮された(5年で2回以下の場合)

扶養の手続きは健康保険組合ごとに細部が異なります。この記事の内容は一般的な基準に基づくものであり、実際の判断は必ず加入している健康保険組合にご確認ください。最新の制度情報は厚生労働省公式サイトでもご覧いただけます。